西瓜

















「こんにちは〜」



蝉がけたたましく鳴く夏の暑い土曜日の午後、
静まりかえった浦原商店の戸を開ける者。



「は〜い、いらっしゃま… さん!!」

「こんにちは♪ ウルルちゃん。」



店の奥から出てきたウルルが嬉しそうに訪問者を出迎えた。
その直後、この店の主、浦原喜助が奥から顔を見せる。



「あ、 サ〜ン!!いらっしゃ〜い!」

「こんにちは、喜助さん。皆で一緒に西瓜を食べようと思って。」



手には大きな西瓜。
女性が持って来るには少々苦労するサイズではないかと喜助は思う。



サン、重かったでしょう。」

「ちょっと頑張っちゃった♪
 でも凄く冷えてるのを買ってきたからすぐに食べられますよ。」



西瓜からは冷えている証の汗が滴っていて、
その西瓜を持ってきた も玉のような汗が噴き出している。



「さ、早く中に入って涼んでくださいな。西瓜はテッサイに切ってもらいまス。」

「ではお邪魔いたします。」



喜助は奥の部屋にいるジン太を呼ぶ。
出てきたジン太に「テッサイに切ってもらってきて下サイ。」
と言って西瓜を渡すとジン太は「ぃやっほ〜!スイカだぜぃ〜♪」と言いながら
奥へ西瓜を持っていった。




































「さ、西瓜ですぞ。 殿、ありがとうございます。」

「テッサイさん、お邪魔してます。お手数をお掛けしてしまって…。」



テッサイと挨拶を交わし、皆がちゃぶ台につく。
それと同時に西瓜に手を付けたのはジン太。



「いっただき〜♪」

「ジン太くん…お行儀悪い…。」

「んだと!ウルル!!うっせーなー!」

「はいはい、ジン太は サンにお礼を言ったんスか〜?」

「ッ…………イタダキマス……。」

「ハイ、良く出来たッス♪」



ここの連中の会話はなんでこんなに面白いのだろうと はいつも思っている。
家族でもない、親子でもない…そんな「浦原ファミリー」が、
にとって羨ましくそして微笑ましく感じた。



サン、何か嬉しそうッスね。」

「フフ…そうですか?」

「何か良いことでも?」

「皆と一緒に此処で楽しく過ごせて幸せだなって思って。」

「えっ?」



喜助は自分の想い人が嬉しそうに、この空間が好きだと言ってくれたことに驚きもしつつ、
「あぁ、やっぱり サンッスね…」と自分も嬉しく思った。



















仲は良いが付き合っている訳ではない。
悩み事・相談事・弱音・愚痴はお互いに話すが、恋愛のことは話さない…話せない。
いっそ、自分の気持ちを に伝えようかと何度も思ったが、
今の関係が崩れるのではないかと思うと言い出せない。









(だから今のままで充分なんス。)









元十二番隊隊長ともあろう男が、一人の女性の前では臆病になる。
恋愛とはそんなもの。







「良かったら、アタシの店へ遊びに来て下サイ…。というより
 アタシと友達になって下さいな…。」







この言葉を言うのが精一杯だった喜助に はニコリと微笑んで、








「私で良ければ。コチラこそ宜しくお願いします。」








と言って赤らめた彼女の顔を今でも覚えている。
それからというものの、喜助の「毎日でも来て下サイv」攻撃に
多少の遠慮はありつつ、 は週に2回位のペースでこの浦原商店へ来ている。
テッサイ・ジン太・ウルルはもちろん、
たまに来る夜一までも顔なじみになっていた。
(もちろん に対する喜助の気持ちを皆知っている訳だが…)

夜一だけは…実は の気持ちも知っているので、
喜助の一喜一憂を楽しんでいる。
















「……さん、喜助さん?」

「…えっ?ハ、ハイ!!」

「どうしました?何かボーッとしてますけど…?」

「いや…何でもないッス(^^ゞ 皆で食べる西瓜は美味いと思って♪」

「そうですよね。」



が本当に嬉しそうに微笑むので、喜助は見とれてしまう。







(いつまでもこの時間が続けばいいッスねぇ…)







そんなことを考えながら喜助は西瓜を食べ始めた。





















…と、 が「あっ」というような顔をしている。



サン、どうしたんスか?」

「喜助さん、ちょっとジッとしてて。」

「ヘッ?」



は喜助の顔に手を伸ばし、クチの横ににくっついている
西瓜の種をつまむと



「西瓜の種、ついてましたヨ♪(ニコッ)」

「!!!ぁ……。」



凄い恥ずかしいような、凄い嬉しいような…
喜助の顔は真っ赤になって、言葉が出ない。



「…喜助さん?」

「あ… サン…ありがとう…ございま…ス…。」



お礼を言うのが精一杯。
そんな遣り取りの横では、ウルルとジン太が西瓜に夢中。
テッサイは喜助と を見守るように微笑みながら頷いていた。














そんな夏のある日。













FIN :*:・。,☆゚'・:*:・。・:*:・゚'☆,。・:*:*:・。,☆゚'・:*:・。・:*:・゚'☆,。・:*






喜助「それにしても サン、西瓜を食べる仕草も可愛いかったッスね〜♪」
夜一「お前は、そんな事ばかりぬかしておるのう。」
喜助「そんな事とは何スか!!」
夜一「あまりオッサン臭いことばかり言っておると、 に嫌われるぞ!」
喜助「(゜◇゜)ガーン!!それは困るッス!!」
夜一「時に喜助!儂の西瓜は何処じゃ?」
喜助「はっ?」
夜一「もちろん、儂の分はあるんじゃろうな?」
喜助「夜一サンの分は…残ってたッスかねえ〜?(-.-;)y-~~~」
夜一「…そうか…そんなに瞬閧状態で暑中見舞いが欲しいと見えるの…(パリパリパリ…!!)」
喜助「ギャー!すみませんーーー!!!(たかが西瓜じゃないッスか〜〜〜!)」