眼鏡





 









「…ありゃ?」



良く行く馴染みのスーパーで、
見たことがあるようなないような女性を喜助は見つける。
あれは… ではないのか?



…サン?」

「あ!喜助さん!こんにちは。」



やっぱり サンでしたか…と喜助は のそばへ寄る。
今の時刻は午後の2時を過ぎた頃。
今日の黒崎医院は午後は休診。
ということは、そこの看護師である も午後は休みになる。



サンは、夕飯の買い物ッスか?」

「はい。喜助さんは?」

「ジン太やウルルに頼まれたものやら、牛乳やら色々ッス。」



なんか の雰囲気が違う気がする。



「あ!眼鏡!!」

「あれ?喜助さん、ご存じなかったでしたか。」

サン、『眼鏡っ娘』だったんスかあ〜♪」

「『眼鏡っ娘』ってもうそんな風に言われる歳ではないんですけどね(^^ゞ(^^ゞ」

「では普段はコンタクトレンズを?」

「そうなんですけど、ちょっと今日は眼の調子が悪くて眼鏡をしてるんです。」

「眼鏡も似合うッスね♪」

「そうですか?私、ド近眼なんで、そう言われると嬉しいです。」

「ちょっと眼鏡をお借りしてもいいッスか?」



どうぞ、と は自分が掛けていた眼鏡を喜助に渡した。
喜助はその眼鏡をおそるおそる掛けてみる。



「うわっ!これは相当キツイッスね〜。」

「そうでしょ。だから眼鏡とかコンタクトがないと生活できないんです。」

「度がキツすぎて、眼がグルグルまわるッス。」



そういって眼鏡を外すと、 が真っ直ぐ自分を見ていることに気付いた。
裸眼の彼女は、たぶん喜助の顔が分からないから、余計に見つめているのだろう。
そんなこと分かっているのに、喜助は恥ずかしさを覚える。
の大きな眼に映っている自分の顔。
その眼に吸い込まれそうな感覚がした。



サン、アタシの顔ってわかるんでスか?」

「ん〜、髪の色と顔の色はわかります。」

「あらま。」

「遠近感も分からないので、本当に困ったものです。」



喜助は、 に眼鏡を返した。



























買い物が済み、一緒に帰る。
途中に小さい公園があり、喜助が「ちょっと休んでいきまショウ♪」と言って
自動販売機でお茶を買ってきた。



「ドウゾ♪」

「ありがとうございます。」

「それにしても、眼鏡がないと生活できないなんて大変スね。」

「喜助さんは、視力は良いんですか?」

「測ったことはないですが、たぶん普通に見えると思います。」

「それは良いことです。」

「だからなんスけど、近眼の感覚がよくわからないんスよね。」

「なるほど、そうですよね。近眼は近眼の人にしかわからないですよね。」

「『遠くが見えない』ということは、『近くなら見える』ということッスよね…。」

「はい。」

「どのくらいまでなら、眼鏡無しでもわかるんスかね?」

「そうですねえ…。」



はベンチから立ち上がると、喜助から約1m位のところに立って、眼鏡を外す。



「この位なら、顔が分からなくても喜助さんってわかります。」



さらに はもう3歩ほど、後ろへ下がる。



「この位…でも喜助さんってわかるかな…?」

「あ、 サン、あぶないからもういいッスよ。」



さらに が後ろに下がろうとしたとき、足元の何かにつまずいてバランスを崩した。



「きゃっ!」



後ろ向きで歩いてた上に、今は眼鏡を外していて、ほとんど何も見えない状態。
は後ろにそのまま倒れた……かと思ったが、それは何かによって免れる。



「ほら!いわんこっちゃない!!」

「え?あ!喜助…さん?」

「頭打ったら大変ッスよ!見えてないんスから!!」



自分の何mか先のベンチに座っていたはずの喜助が、自分を抱きかかえ、
後ろへ倒れるのを防いでくれていたのだ。
顔を上げると、喜助の顔が間近にあったが、裸眼の はハッキリと表情が見えない…。
でも喜助の眼だけは、真剣な、そしてほんの少しだけホッとしたように見えた気がした。



「す、すみません。」

「意外におっちょこちょいッスね〜 サンは♪」



「ハイ、眼鏡。」と言われ、倒れるのと同時に手を放してしまった眼鏡を喜助からもらった。
眼鏡は何処も壊れていない。



「あ…眼鏡も…ありがとうございます…。あれ、何処も壊れてない!?」

「うまくキャッチ出来たんスよ♪きっと。」



「さあ、帰りますかネ」と言って喜助は の買い物の荷物も一緒に持って
歩き始めようとした。
慌てて が自分の荷物を取りに行く。



「…やっぱり、眼鏡は色々不便なのかもしれませんね。」



が喜助に話しかける。





「?」

「でも、眼鏡って眼に負担がかからないから、楽なんですよね…。」

「アタシは…どっちでも良いと思いまスけど…。
 ただ、眼鏡の サンは新鮮で可愛いと思ったッス♪」

「『可愛い』は無いと思いますよ…(苦笑)」

「眼が疲れているのに、無理してコンタクトにする必要はないと思います。」

「…はい。そうですね。」

「裸眼の サンもドジっ娘で可愛いッスv」

「あの…それは…、見なかったことにしてクダサイ……。」

「フフフ。」









恥ずかしがり屋の サンが裸眼では真っ直ぐに自分を見てくれる…。
あの瞬間が、喜助にとって何とも言えない気分にさせた。






普段だったら、あんな近くで喜助さんの顔を見ることはできなかったよね…。
ド近眼のおかげで、ほんの少しだけ恥ずかしさを消してくれることが にとっては嬉しかった。






コンタクトレンズでは、あまりありえない状況だし、
眼鏡もたまには良いじゃないかと、二人は別々に思った。












FIN :*:・。,☆゚'・:*:・。・:*:・゚'☆,。・:*:*:・。,☆゚'・:*:・。・:*:・゚'☆,。・:*






喜助「夜一サンは眼は悪くないんスか?」
夜一「まあの。しかしじゃ。」
喜助「 ? 」
夜一「お主の眼鏡姿は、なにやらイヤラシイのう。」
喜助「イヤラシイって…(^^ゞ」
夜一「さすが『エロエロ店主』じゃ。」
喜助「『エロエロ』じゃなくて『ハンサムエロ』ですよぉ。
   正確に言うと『ちょっと影あるハンサムエロ店主』!」
夜一「似たようなもんじゃ。」
喜助「『エロエロ』じゃあ、そればっかりじゃないですか〜(TДT)」
夜一「儂は、 の眼鏡姿は良いと思うがの。」
喜助「そりゃあそうですよ! サンなんですからv」
夜一「誰かと違ってイヤラしくないからの。」
喜助「イヤラしかったら、マズイッスよ。」
夜一「それはそうじゃ。」
喜助「アタシの身が持ちません!(キッパリ)」
夜一「…やっぱり『エロエロ店主』じゃ。」
喜助「冗談ですよぉ〜じ・ょ・う・だ・ん・♪」
夜一「では『喜助はエロエロ店主』じゃから気を付けろと に言っておくか…。」
喜助「そ〜れ〜だ〜け〜は〜ヤ〜メ〜て〜く〜だ〜さ〜い〜!」
夜一「あっはっはっ!!喜助ェ〜、本当に必死じゃのう〜♪」