大切な人・後















喜助は、真っ正面から男のそばまで行き、 の腰に回った手を掴み簡単にねじ上げると、
を引っ張って、自分の胸でキャッチした。



「き、喜助さん!」

「大丈夫ッスか?」

「…はい。」

「それじゃあ、少しここで待ってて下さいネ。ちょーと彼と話をしてくるんで。」

「あの…喜助さん…、気を付けて!」

「大丈夫大丈夫♪」



そう言って、 に優しい笑顔を向けると、今度は男の方へ向きを変えた----------。
その顔は笑顔だが、恐ろしく凄んだ笑顔。



「お待たせしたッスね…。」

「貴様!人の女に手ェ出しやがって!!」

「だからぁ、彼女はアタシの『大切な人』って言ってるじゃないッスか!」

「うるせぇ!」



男は胸ポケットからナイフを出す。
はそれを見て青ざめた。しかし怖くて声が出ない。



(喜助さん!!!危ない------------!!!)



「わからない人だな…アンタも…。」

「人の女に手ェ出すと痛い目に合うって…、思い知らせてやる!!」

「…仕方ないッス。」



喜助は溜息を一つつくと、瞬歩で男の背後へ回り、杖で男の首を押さえる。
からは見えないが、杖からは「紅姫」の刃が現れ、男の首にピタリと張りついている。



「どうします?このまま警察へ行きまス?それともアナタの首から上、無くしちゃいましょうか〜?」

「な、何を冗談…。」



喜助は更に低いトーンで男に話す。














「アナタ、アタシが一番怒ることをやっちゃってるんスよ…。
 あんまり聞き分けがないと、このまま…魂ごと、この世から消しますけど…。」














持っている紅姫に少し力を入れると、男の首に1本の紅い線ができあがる。
男は恐ろしくなって、喜助に命を乞う。



「わかった!もう絶対に付きまとわないから!頼む!命だけは!!」

「…彼女の前から消えろ。絶対に姿を見せるな。もし破るようなことがあれば…。」



喜助は紅姫をちらつかせ、少しだけ霊圧を上げる。



「…命、消えちゃいますよ〜ん♪ モチロン、いつでも見張ってまスから♪」

「はいッ!もう二度と現れませんッ!すんませんでしたッ!」



男は逃げるように去っていった。
そして男が見えなくなると、喜助は の処へ向かう。



サン…」

「喜助さん!大丈夫ですか!?」

「へ? ハ、ハイ…。」

「あの人は刃物を持ってたんですよ!それなのに!」



は刃物によるケガがあるか確かめるように、喜助の腕・胸・腹あたりの服を確認する。
そしてケガがないことがわかると、ホッとしたのか、急に足がガクガクと震えだした。



「え?あ!?足が!?」

サン!?」

「…今頃…怖くなって来ました…。」

「大丈夫…?」

「は…はい…。それよりも…」

「 ? 」



は早く喜助にお礼が言いたかったので、
一度深呼吸をして自分を落ち着かせた。そして、



「ありがとう…ございます…喜助さん…。」



この一言を言うのが今は精一杯だった。
目を潤ませながらお礼を言う彼女が、先程までの恐怖をまだ引きずっているように見える。
喜助は の手を取ると浦原商店までずんずんと歩き出した。



「き、喜助さん!?」

「ウチで一緒に夕飯を食べましょ。」

「え?」

「帰りは家までお送りするッス。帰りたくなければウチの客間に泊まればいい。」

「で、でも…」「決定ッス!いいッスよね♪」



喜助は嬉しそうに と一緒に帰っていった。


































浦原商店では、突然の来訪の を快く迎え、皆で楽しい夕食の時間を過ごした。
夕食も終わってお茶を飲み、 がふと時計を見ると午後9時半。



「喜助さん、私そろそろ…。」

「泊まらないッスか?」

「ありがたいのですが、やはり帰った方が…。」

「それじゃあ、家までご一緒に。」

「い、いえ、大丈夫で…」「テッサイ〜!ちょっと出かけてくるッス〜!」

「喜助さん…。」

「アタシが勝手に心配して送りたいんスよ。」



テッサイに見送られ、喜助と は浦原商店を後にした。
喜助が の手を握って…。























サン、本当に大丈夫ッスか?」

「はい、もう大丈夫です。」

「そうッスか…。一心サンに今日の件については…。」

「余計に心配するので、言わないでおこうかと…。そういえば」

「 ? 」

「喜助さんに同じ話を話したと言ったら、『それなら大丈夫』とか言ってましたけど…。」

「……ソウデスカ…。」









(何もかもお見通しッスねぇ…)









喜助は独り苦笑い。
にはその意味はわからなかった。



しばらくすると のマンションが見えてくる。
喜助はマンションの入口で彼女の手を離し、「今日は大変でしたね」と彼女を労った。



「喜助さん、本当にありがとうございました。」

「お安い御用ッス。それよりも怖い夢見て泣かないでくださいね〜。」

「 …えっと…」



喜助は半分冗談、半分からかうつもりで言ったのだが、 が少し困ったような顔をしたので、
余計なことを言ってしまったと自分自身に少し腹を立てた。



「すみません、変なことを言ってしまったッスね。」

「え?だ、大丈夫です…ただ少しだけ、夢に出てきたらヤダなあって思っただけで…。」

「夢に出てきたら、アタシを呼んで下さいナ。すぐに駆けつけるッスよ!」

「夢の中まで来てくれるんですか?(笑)」

「そうッスねえ…そこまで仰るんであれば…。」


喜助は被っている帽子を取ると、 に被せた。



「え?」

「その帽子を被って眠ると、夢の中にアタシが出てきて、 サンを守るかもしれないッスよ♪」

「…喜助さん…。」

「それに帽子を被って寝ると耳が暖かいッス。」











(本当は…)











本当は、 サンのそばにアタシが居たい…。アナタのそばでずっと守りたい…。
でも出来ないので、せめて帽子だけでもそばに置いて欲しいという喜助の悪あがき。
そんな幼稚な行為を彼女は聞き入れてくれるのだろうかと思ったら、



「私は怖がりなので、この帽子のお陰で怖い夢を見ないで済むと思います!」

「 ! 」

「遠慮なく、お借りしますね… 喜助さん。」



嬉しい返事が返ってきたので、喜助は瞬時に顔が紅くなるのを感じた。
しかし帽子を に貸してしまったために、顔を隠すことが出来ない。



「そ、それじゃあ サン!オヤスミナサイ!」

「あ、はい、おやすみなさい。」



少し下を向きつつ、彼女に自分の表情を見せないようにすると、
早々に挨拶を済ませ、 をマンションの奥へと促した。



















は自室に入り、居間の電気をつけると、
窓の外からカランコロンと下駄の音が聞こえてくる。
慌てて窓を開け、音の方向を見ると、
下駄に黒い羽織、そしていつもとは違う、帽子を被っていない外跳ねの蜂蜜色の髪。



「喜助さん!」



喜助は振り返らずに右手をあげて の声に応える。
彼女には見えないが、喜助はとても嬉しそうだった。



「そういえばアタシが サンのこと、『大切な人』って言った意味、分かってくれたッスかね…?」



喜助はゆっくりとマンションを後にした。
丁度同じ頃、



「そういえば喜助さん、あの時私のことを『大切な人』って言ってくれたけど、あれは…。」


















二人がお互いの気持ちに気付くのは、まだまだ先のこと………。










FIN :*:・。,☆゚'・:*:・。・:*:・゚'☆,。・:*:*:・。,☆゚'・:*:・。・:*:・゚'☆,。・:*






夜一「喜助ッ!あーゆー輩はもっと厳しく対処しないとダメじゃッ!」
喜助「そうッスね、万死に値するッス!!」
夜一「珍しいのう…そこまでお主が怒るとは。」
喜助「当たり前ッスよ! サンを恐怖に陥れたんスよ!(--#)」
夜一「そうじゃの。」
喜助「しかも、腰に手を回すなんて!!」
夜一「…(゚Д゚)ハァ?」
喜助「アタシだってやってないのに!!」
夜一「…お主、そこか!怒るところは(´ヘ`;)ハァ」
喜助「そりゃあそうッス!アタシの サンに触ること自体、万死に値…。」
夜一「わかったわかった!」
喜助「…本当にわかってくれたんスかね〜!?」
夜一「しかしだな、あやつがまた に付きまとってきたらどうするつもりなんじゃ?」
喜助「魂消滅ッスよ!(`_´プンプン)」
夜一「そうではなくて、また襲われるようなことがあったら…。」
喜助「それは無いッスよ。」
夜一「言い切れるのか?」
喜助「へっ?」
夜一「もしも… がまた奴に襲われでもしたら…その責任は…喜助、どうするのじゃ?」
喜助「そ、それは…。」
夜一「 もさぞやショックじゃろうなあ…( ̄ー ̄)ニヤリッ」
喜助「……(゚◇゚)ガーン」
夜一「…ふははは!冗談じゃ、喜助!」
喜助「じょ、冗談って…_| ̄|○ガクリ」
夜一「お主はのう、なんというか一つ抜けるときがあるのう。」
喜助「(´ヘ`;)ハァ」
夜一「崩玉とか崩玉とか崩玉とか」(←すっごいイジワル)
喜助「(゜◇゜)ガーン!!!」
夜一「……冗談じゃ(笑)」
喜助「非道い!非道すぎるッス!!!ヽ(`Д´)ノウワァァァンン」