ブランコ





 










キィ…… キィ……



店のそばに公園があって、そこにはブランコがあるんス。
そのブランコは油が切れかかっているせいか、誰かが座ると「キィ…」と音がして、
その音は店先よりもアタシの部屋からの方がよく聞こえるんスね。

夕方までは、近所の親子連れや小学生の元気な声とともにブランコの音が聞こえるんスが、
たまに夜のみ、1台のブランコだけが弱々しい音で聞こえる時があって、
その音が終わると、必ずと言っていいほど店に来客があるんス。



「こんばんは〜♪」



サンは週に2回ほど、ウチに遊びに来てくれまス。
しかし、たまに彼女は公園のブランコに寄ってから来ることがあって、
初めはウチの夕飯の時間をずらす為だとか、少し考え事でもあったのかと
その位にしか思ってなかったんス。
いい大人ですし、仕事で嫌なことだってあるでしょう。
勿論、彼女はウチに寄った後に弱音や愚痴をアタシに話すことは絶対にありません。
だからアタシも彼女に追求したりすることはしなかった。
しかし、見てしまったんスね…。



































外はもう暗く、公園からは子供の声はしません。
しかし、ブランコの揺れる音が弱々しく聞こえてきました。
アタシはまた サンがウチに来る前に乗っているんだと思い、
自室の窓から公園のブランコを見ていました。

やはりブランコに乗っているのは サンで、
公園のライトに照らされていました。
そんな処で油を売ってないで、悩みや愚痴があれば
どんどんアタシに話してくれればいいのにと思い、
窓から彼女に声を掛けようと思ったんス。

 

 









彼女は…泣いていました。


 

 








暫く様子を見ると、彼女は落ち着いたのか、
ブランコから降り、なにやら体操のように体を動かし、
深呼吸をして、御丁寧に最後にバッグから目薬を出してさしていました。
今まで泣いていたそぶりを見せないように。
そしてその直後、彼女は店にやってきたんス。

しかし サンは、いつものように明るくジン太やウルルに接していて、
アタシにも笑顔を絶やしません。
もしかしたらアタシの見間違いだったのかと思い、
その時は彼女に何も聞かなかったんス。

しかしそのひと月後、また公園から弱くもの悲しいブランコの音が聞こえ、
自室の窓からのぞいてみると、やはり サンがブランコに座っていました。



 

 







彼女は、やっぱり泣いていました。




 

 






アタシは居ても立ってもいられなくなって、
走って公園の サンの処まで行きました。









サン!」

「 ! 喜助…さん!?」

「どうしたんスか?何かあったんスか?」

「…いえ…、たいしたこと無いです…。」

「たいしたこと無いわけないでしょう!?ひと月前も泣いてたのに。」



サンは驚いてアタシの顔を見ると、すぐに下を向いて
顔を見せてくれなくなりました。



サン?」

「…たまに…死んでしまった家族のことを思いだしてしまって…」









「どうしようもなく、淋しくなるときがあって…。
 だからと言って、自分の家で独り泣くのもいやだなって思って、
 喜助さんの家へ遊びに行く前にココで少し吐き出していたんです。
 …その後に浦原の人たちと明るく楽しく過ごせれば、私も気分的に落ち着くので…。」









サンの家族は、中学の時に事故で彼女以外亡くなり、
彼女は遠縁である黒崎サンの病院で働いているんスね。
黒崎の人たちは、彼女のことを本当の家族のように接していて、
それは サンも感謝しているようッス。

しかし、ときどき自分の家族を思い出すことがあるようで。

サンは迷惑が掛かると思って、その淋しさを黒崎サンたちには話さない。
そうすると サンの中の「淋しさ」が満タンになってくる。
結果、公園で独り泣いた後、アタシらに会ったりして
自分なりに気持ちの調整をはかっていたらしいんス。



「すみません…喜助さん。ご迷惑をかけてしまいました…。」



アタシは、 サンがいる隣りのブランコに座ってキィキィと漕ぎ出しました。



「ネェ、 サン…。」

「…はい。」

「淋しがるというのは、恥ずかしいことではないとアタシは思うんス。」

「……」

「淋しく思うということは、それだけ相手を愛していたことッスよね…。でも」









「独りで辛く苦しく思っていても、それはちっとも淋しさからは開放されないはずッス。」









「…それは…。」

サン、アタシ前にも言ったッスよね?
 泣きたいときは泣く、独りで我慢しない、もっとアタシを頼って下さいって…。」



アタシはブランコを降りて、隣の サンの前へ移動、
ブランコに座っている彼女の前に立ち、彼女の頭を軽く撫でました。



サンは、アタシを頼ることが迷惑になると思っているようッスけど、
 アタシは サンに頼られる方が嬉しいッス。」

「 ! 」

「頼ってくれないで、独りで悲しそうにしている サンを見る方が
 アタシにとっては淋しくて辛い…。」

「…喜助…さん…。」



サンは遠慮がちに、アタシのウエストあたりに手を回すと
そのまま静かに、ただ黙ってジッとしていました。
泣いている気配はなく、抱きついている サンに「泣かなくていいんスか?」と聞くと、



「…喜助さんに巻き付いたら、なんだか安心してしまって、涙が止まりました。」



と顔をアタシの腹に押しつけたまま、小さな声で教えてくれました。
それがとても嬉しくて、彼女の頭を立ったまま抱きしめてしまいました。














それからというもの、夜、公園で小さなブランコの音がすると
アタシは必ず窓から様子をうかがうッス。
そしてそれが サンだったときは、急いで公園まで走って、彼女の前に立つんスね。
すると サンは遠慮がちにアタシに抱きついて眼を閉じます。
アタシは彼女が落ち着いて離れるまで、彼女を抱きしめ返します。
それが彼女との暗黙の了解となりました。






























今日は久しぶりに サンがいつものブランコに座っているようッス。
それではアタシはちょっと行ってくるんで。










FIN :*:・。,☆゚'・:*:・。・:*:・゚'☆,。・:*:*:・。,☆゚'・:*:・。・:*:・゚'☆,。・:*






夜一「喜助〜!見直したぞ!!」
喜助「ええっ!?」
夜一「そこで何故驚くのじゃ?(--#)」
喜助「い、いや…つい…いつものノリッス…(^^ゞ」
夜一「せっかく儂が珍しく褒めたというに!」
喜助「そう!そこッス!!珍しく褒められたんで。」
夜一「貴様が言うな!」
喜助「ハイ…(^^ゞ(^^ゞ(^^ゞ」
夜一「しかしだの…もしかしたら、お主、ただ に抱きつきたかっただけ…ではない…かの?」
喜助「ひ、非道い!非道いッス!夜一サン!!」
夜一「え!?」
喜助「アタシはそこまでスケベではないッス!それなのに、そんな言い方って…」
夜一「す、すまん…喜助(^^ゞ」
喜助「もっと純粋な気持ちなんスよ〜ヽ(`Д´)ノウワァァァンン」
夜一「ゆ、許せ…。 あ! !!」
「こんにちは〜」
喜助「 サァ〜〜ンvvv」
夜一「さっきまで泣いておったクセに…ブツブツ」
喜助「へ?何か言いましたかあ?夜一サン♪」
「???」
夜一「 !こんな男にひっかかってはダメだぞ!!泣きを見る!!」
喜助「よ、夜一サン!なんということを!!」
夜一「わははははは!さらばじゃ!!」
喜助「うわっ!逃げた!!非道いッス!!」
「…喜助さん?夜一サンと一体何のお話しを?」
喜助「え?あー、うー、そのー…(大汗)」