咄嗟(とっさ)
「どうしたんスか!?この柿!」
喜助が目にしたのは、居間の定位置に座る
と
ちゃぶ台の上に転がる立派な柿…14〜5個。
「一心兄さんが『持っていけ』と。」
「一心サンが?」
「はい、この柿、黒崎家の庭の柿で、とっても美味しいんです♪」
「そうなんスか〜。」
仕事帰りに「浦原ントコ、寄っていくんだろ?」と一心に言われ、
手渡された沢山の柿。
「毎年、美味い柿が出来るのに、ウチの連中はあまり食べねーんだ。」
「でもこんなに沢山…。」
「まだまだ沢山あるから、構わねーさ。」
「浦原に変なコトされたら、すぐ連絡するんだぞ!」と言われ、
さすがにこれは本人には言えないと、柿の件のみを喜助に伝えた。
どうやら、一心は
の気持ちを知っている(感づいている)らしい。
「切ってくるので、台所を借りますね。」と
が立ち上がろうとすると、
「包丁と器を持ってきますから。」と喜助が彼女を軽く制す。
「台所で切ってると冷えますし。此処でお願いしまス。」
「はい、それでは…。」
喜助が持ってきた包丁を貰うと、
は慣れた手つきで柿を剥き始めた。
「そういえば、テッサイさんとジン太君達は?」
「仕事で出かけてるッス。1〜2時間位で返ってくると思いますよ。」
「それじゃあ、皆の分も切っちゃいましょう。」
「すみません、お願いしまス。」
「…夜一さんの分は…どうします?」
「夜一サンのは…いつ来るかわからないし…今はいいッスね。」
「かしこまりました(笑)」
は小さく鼻歌を歌いながら、再び柿を剥き始めた。
喜助にはその鼻歌が何の曲だかわからなかったが、
彼女の優しい声が心地よく、幸せな気分になった。
しかし、彼女をずっと見つめているわけにもいかないので、
照れ隠しに新聞を読み始める。
がもう1つ新しい柿を手に取り、2つに割ったその時、
「きゃっ!」
「どうしたッス?」
喜助は、目線だけを
の方へ向け、彼女の様子をうかがう。
は、自分が持っている柿から目が離せない様子。
「…虫が!」
柿の中に小さなイモ虫。
は「びっくりした…」と言いながら、虫がいた周りの柿を切り取ろうとした。
喜助も、「虫ッスかあ〜」というような顔をしながら、再び新聞へと目を落とした…が、
「痛っ!」
今度も
から発せられた声。
今度は「驚きの声」ではなく、あきらかに「何処か怪我をしたときの声」。
喜助は新聞をちゃぶ台に置き、
の方へ身体を向ける。
「何処か切ったッスか?」
「ちょっとよそ見をしてて…。」
見れば、
の左人差し指から血が。
咄嗟に彼女の左手を掴み、慌てて血の出ている左人差し指をクチにくわえた。
「 ! 」
喜助は「そそっかしいッスねえ」と、苦笑いをしながらクチから指を離す。
するとまた血が流れそうになっているため、再びクチにくわえようとした時、
と眼が合う。
は眼をまん丸にしながら、顔は驚くほどに真っ赤で…。
「
サン、顔真っ赤ッスね〜」なんて思いながら、指をくわえた…次の瞬間、
気付いたらしく、喜助の顔も見る見る真っ赤になっていく。
しかし、指はまだくわえたまま。
やっと指をクチから離すと、シドロモドロに
に謝る。
「つ…つい、咄嗟に…血を止めようと指をくわえてしまったッス。」
「……」
「小さい頃から、こうしてなめて血を止めてたもんで…。
今は、あれ…ッスね…衛生的に良くなかったッスね…。」
「…あの…」
「衛生面以前に、イキナリなめられて気持ち悪かったッスね…すみませ…」「そんなこと!」
は顔が真っ赤のまま、喜助の言葉を遮る。
そして、うつむきながら喜助に話す。
「…確かに…衛生的に言えば、水道水で洗い流したり、消毒薬で拭くべきなんだと思います…でも、
私も咄嗟だったら…指をくわえてたと思います…。」
の左手は、喜助に掴まれたまま。
「…それから…。」
「 ? 」
「気持ち悪くない…です…。」
「えっ…。」
「…喜助さんに血をなめられても…。」
まだ、
の左手は喜助に掴まれている。
喜助は自分がいつまでも彼女の左手を掴んでいることに気付くと、慌てて手を離し、
自分の紅い顔を隠すように急いで救急箱を取りに行く。
そして、
の正面に座り直すと、まずは濡らしてきたキレイなタオルで
の両手を拭き、続いて傷口に消毒薬をかける。
「…しみますか?」
「…大丈夫です。」
消毒薬で濡れた指を少し乾かそうと、
喜助はフーっと彼女の指に息を2〜3回吹きかけ、
絆創膏を貼ってやる。
「…喜助さん、ありがとうございます。」
「お安い御用ッス♪」
「…看護師のクセにと言われるかもしれませんけど…。」
「 ? 」
「咄嗟にしてくれたことが、とっても嬉しかったです。」
「…
サン…。」
「駄目な看護師ですよね」と照れ笑いをしながら、再び柿を剥こうとするので、
喜助は彼女から包丁をとりあげ、
「ケガしちゃったんスから、続きはアタシが剥くッスよ…。」
と、やっとおさまった紅い顔を再び紅くしながら
器用に柿を剥いていった。
店先では、賑やかなテッサイ達の声が聞こえてきた。
FIN :*:・。,☆゚'・:*:・。・:*:・゚'☆,。・:*:*:・。,☆゚'・:*:・。・:*:・゚'☆,。・:*
夜一「大変じゃ!喜助のエロエロが
にうつってしまう!!」
喜助「はああぁぁ!?(゚Д゚)」
夜一「相変わらず、やることがエロいのう。」
喜助「夜一サン!エロいって言いますけどねえ!」
夜一「ん?なんじゃ?違うと申すのか?」
喜助「あれは本当に咄嗟のことで…。」
夜一「それじゃあの、儂が
と同じ状況になったら、指をくわえるのかの?」
喜助「えーーー!!それはちょっと!!」
夜一「やっぱりじゃ!」
喜助「だって、夜一サン、猫の姿の時、素手で何処を歩いてきたかわかんないスもん。」
夜一「ほほぅ。理由はそれだけか?」
喜助「そ、それだけって…(滝汗)」
夜一「もし
が猫だったら汚いからやらぬのか?」
喜助「いえ、もちろんくわえるッス!(きっぱり)」
夜一「ふぅん…( ̄ー ̄)ニヤリッ」
喜助「はっ!(°°;))。。オロオロッ。。・・((;°°)」
夜一「…まったく。」
喜助「で、でも咄嗟だったのは本当のことッスよ!」
夜一「わかったわかった。」
喜助「あー!その眼は絶対信用してないッスね!(--#)」
夜一「…さてと、儂はちと急用を思い出した!」
喜助「夜一サン!!」
夜一「喜助!じゃあの!!」
喜助「夜一サァ〜〜〜ン!(TДT)」
テッサイ「…店長、
殿が見えましたぞ。」
喜助「え!?
サァ〜ンvvイラッシャ〜イvv」
テッサイ「………」
黒猫夜一「テッサイ…お主も苦労するの…」
テッサイ「いえいえ、毎日オモシロオカシク拝見している故。」
黒猫夜一「…
もこれから大変じゃの…。」
テッサイ「……」(←これは否定せず)