トリック・オア・トリート














「「明日は友達の家でハロウィンパーティーがあるんだよ!!」」



ユズちゃんとカリンちゃんに言われ、「あ、明日はハロウィンなんだ」と気付いた。
一護も「なんか井上たちがやたらと盛り上がってて、俺も誘われた」と言ってたっけ。

明日は、たしか喜助さんに「31日の夜、ゴハンを食べに来て下サイね〜♪」と言われてたから、
何かハロウィンらしいお菓子でも買っていこうかと は思った。



















明日のハロウィンのお菓子を買い、 は家路につく。
きっと明日は、ジン太君やウルルちゃんが「トリック・オア・トリート」と言ってお菓子を強請るかなと
そんな光景を楽しみにしながら、ふっと喜助の顔が頭をよぎった。



(『トリック・オア・トリート』って『お菓子をくれなきゃ、いたずらするぞ!』って意味だけど…。
 …そういえば、最近の喜助さんって、ちょっとイジワル…よね?)



本当にイジワル…というワケではなく、何故か自分のココロにちょっかいを出すと言った方が正しいのか、
核心に触れるようで触れない、優しいのにちょっとだけイジワル…みたいな。
それはまるで「私の気持ちを見透かされている」ようでほんの少しだけ悔しかったりもする。



(喜助さんは、私の気持ちなんてすでにお見通しなんだろうな…。)



でもその気持ちを直に喜助に言えない自分がいて、それはそれで苦笑する。
なぜなら「喜助さんは優しいから、自分の相手をしてくれているだけ」と思うから。
でもココロの隅では「自分のことを好きでいてくれている?」と思うのも事実。
そんな自分に喜助はちょっとだけ囁いてみたり、手を繋いでみたり、色々とちょっかいを出してくる。
それが にとっては嬉しい反面、どうしたらよいのか分からなくなっている。



(そんな喜助さんも嬉しいんだけど…なんか…ね…。)



結局は惚れた弱みなんだよね…と思いつつ、 は床についた。





































































「こんばんは〜。」



31日の夜、 は「浦原商店」を訪れる。
店の外、中にはハロウィンらしき飾りは一切無い。
いつもと変わらない風景の中、店の奥から賑やかな足音が2つ。



「「トリック・オア・トリート!!」」

「こんばんは、ジン太君、ウルルちゃん。」

!お菓子よこせ!!くれないと!」

「…イタズラするかも…です…。」

「は〜い、お菓子。でもスコッチケーキだけどいい?」

「え!ケーキ!?やったぜーー!!」



ケーキの箱を持って奥へ行こうとしたジン太を、
巨大な影(失礼!)が立ちふさがる。



「駄目ですぞ!ジン太殿!! 殿にちゃんとお礼を!!」

「い、言ったぞ!!」

「いーえ!聞いておりませぬ!!」



テッサイがジン太を持ち上げ、 の前に置くと
「さ、ちゃんと!」と言うので、仕方なく



「… 、ありがと…。」

さん…ありがとうです…。」

「はい、二人とも良くできました♪」



ジン太とウルルはバタバタと奥へと走っていった。



殿、いつもいつもすみませぬ…。」

「いえ、こちらこそいつもご馳走になってすみません。」

「何を仰います!ささ、早く上がってくだれ!店長もお待ちしております。」



は奥の客間へと通された。



















「いらっしゃーい♪ サン!!お待ちしてましたよン♪」

「喜助さん、こんばんは。」

「今日は『浦原商店大南瓜祭り』なんスよ♪」



客間を見渡すと、万国旗に大小のジャックオーランタンがごろごろ。
部屋の中央にちゃぶ台、ちゃぶ台の上には先程渡したケーキとカボチャ料理が多数。



「す、すごいですね!これ全部、テッサイさんが?」

「はい、『南瓜祭り』の意味はわかりかねるのですが、カボチャの祭りだと仰るので…。」



カボチャの煮付けから始まり、カボチャの天ぷら、きんぴら、コロッケ、
かぼちゃサラダ…とにかくカボチャ料理だらけ。



「私、カボチャ大好きなんです♪」

「そ、そうなんスか?」

「はい!喜助さんは、カボチャは…?」

「そうッスね…嫌いではないんスけど、こんなにカボチャだらけだと…。」



喜助はちゃぶ台の上を見て苦笑した。
ジン太とウルルはすでに自分の定位置に座っており、
喜助と も席に着いた。
最後にテッサイが席に着くと、「それでは始めますかな」と
皆のゴハン・味噌汁をよそいはじめた。









ゴハンはカボチャの炊き込みゴハン、
味噌汁もカボチャの味噌汁だった。



















































食事も終わりケーキも食べ終わると、ジン太とウルルは眠くなったのか
自分たちの部屋へ帰っていく。
はテッサイと夕飯の後片付けをしていると、



殿、店長の部屋へ行ってくだされ。」

「喜助さんの部屋…ですか?」

「はい。」

「じゃあ、片づけが終わったら…」

「片づけは私がやる故、店長の部屋へ。酒の用意をしております。」

「……で、では…すみません…。」



片づけをテッサイに任せ、 は喜助の部屋へと向かう。
襖の前で声を掛けると「どうぞ♪」と明るい声が返ってきた。



「…失礼します…。」

「コチラ、座ってくださいナ。」

「これは?」

「テッサイが用意してくれたんスよ。だから サン」



「少し呑みまセンか?」と盃を渡された。
テッサイが用意した酒の肴は…これまたカボチャづくし。
「テッサイさん、凝るわね…」と苦笑しながらも、やっぱり美味しい物ばかりだったので
は喜助にも勧めた。



「喜助さん!テッサイさんの料理、本当に美味しいですよ!」

「美味しいのはわかるんスけどね…こうカボチャづくしだと…。」

「そうですか?美味しいんですけど…。」

「そんなにカボチャばっかり食べると…太りますよン。」









ほうら…来た!!









「…馬肥ゆる秋…余計なお世話です!」

「でも…少しふっくらした サンもカワイイですけどね。」

「………」



どう返答していいかわからなかった が、喜助をチラッと見ると、彼は余裕の笑み。
酒のせいでそんなことをクチにするのだと は思い、
自分も何かやり返したくて酒のチカラを借りようと、盃に入っている酒を一気に飲み干すと、



「喜助さん!おかわりください!」

「おっ、今日はいけるッスねえ♪」



喜助は嬉しそうに彼女の盃を酒で満たした。






















































「…お礼が遅れましたが、ケーキありがとうどざいまス。」

「え!?あ、いえ…。」

「子供達、本当に喜んでたッス。」

「ヨカッタです。」

「それじゃあ、今度は サンが…。」

「私?」



酒は呑んでいたが少し顔が紅くなっている程度で、まだそんなには酔ってはいない。
は喜助の「今度は サンが…」の意味が理解できないでいる。



「あの…『今度は…』というのは…?」

「そもそもハロウィンでは、子供達が家々を廻り『トリック・オア・トリート』と言って
 お菓子を貰ってくるのが通常ッス。ということは、ウチに来た サンは。」

「 ? 」

「アタシに『トリック・オア・トリート』と言ってお菓子を強請らないとイケマセン。」

「…私が…ですか?」

「はいナ。」



相変わらず面白いことを言う喜助に少し困りつつも、今宵はハロウィン。
大人の自分でも言ってもいいかなと思い、 は喜助に言う。



「それでは…。喜助さん!トリック・オア・トリート!!」

「それではお菓子を…。おっと、差し上げるお菓子がないッス!」

「はぁ?」









また、始まった!!喜助のイジワル!!
だいたい、駄菓子屋なのに「お菓子がない」って!!









「差し上げるお菓子がないので…イタズラしちゃって下サイ♪」

「…イタズラ…ですか?」

「ハイ、何でも受けるッスよ〜♪」

「…う、う〜ん…。」



は困った。
しかし、今夜こそはいつもの喜助のイジワルに一矢報いたいと思い、
少し酔い気味の頭で色々と考える。
そしてその酔い気味の思考が功を奏したのか、喜助の顔を見つめニコリと笑うと



「では、喜助さん、目を閉じてくださいね…。」

「はいナ♪ あ、『くすぐり』はアタシには全く効かないッスよ♪」

「くすぐるんじゃないですよ♪ ちゃんと目、閉じてますか?」



は喜助の顔の前で手を上下させ、見えていないかを確認すると、
自分の顔を、喜助の顔のすぐそばまで持ってきた。そして、



















「えっ?」



















喜助は自分の鼻先に柔らかい物を感じた。
手で自分の鼻を押さえ、目を開けると、顔を紅くしながら微笑むマコトの顔。



…サン?今…?」

「…びっくりしました?」



酔っていないはずの喜助の顔は、驚くほど真っ赤で。
はしてやったりといった顔をしている。



「え?あ…。」

「いっつも私のこと、からかってばかりなので、お返しですよ(笑)」

「う…。」

「…喜助さん?」

「ア…アタシの帽子は…!?」



被っていたはずの帽子が見当たらない。
探すと、 の手に喜助の帽子がしっかりと握られている。
どうも、目を閉じてキスされたのと同時に取られたらしい。



サン!ぼ、帽子を!!」

「駄目です(笑)」

「お、お願いッス〜!」

「喜助さん、耳まで真っ赤ですよ。」

「…アタシが悪かったッス!だから!!」

「フフフ、はいどうぞ!」



喜助は帽子を受け取ると、目深に被り、更に下を向いてしまった。
手は、まだ鼻を押さえたまま。



「…こりゃ…かなり効いたッス…。」

「やった!私の一世一代のイタズラですね♪」

「しかし、 サンにしてはかなりの大胆…。」

「そうですか?もし、そうだとしたら…。」



「きっとお酒のせい…です。」と喜助の盃に酒を注ぎながら は言う。
喜助も の盃に酒を注ぎ、改めて乾杯をした。



「来年の…ハロウィンは、アタシが『トリック・オア・トリート』って言うッスよ。」

「たいへん!イタズラされないようにお菓子を沢山用意しないと!」

「ウチは駄菓子屋ッスからね…その辺のお菓子では駄目ッスよ♪」

「それじゃあ、どんなイタズラをされるか構えてないと…ですね(笑)」

「そうッスね…。」









(アタシは負けず嫌いッスから、来年のハロウィンなんて待たないで
 アナタに『不意打ち』を仕掛けるかもしれないッス…。)









喜助は眼を細めつつ、 が注いでくれた酒をペロリと舐めた。





 






FIN :*:・。,☆゚'・:*:・。・:*:・゚'☆,。・:*:*:・。,☆゚'・:*:・。・:*:・゚'☆,。・:*






夜一「どう見てもただのバカップルにしか見えぬのじゃが!(--#)」
喜助「そんなこと、言わないで下サイよ!結構必死なんスから(^^ゞ」
夜一「必死…のう…。」
喜助「そうッスよ!両想いと決まったワケじゃないッスよ〜。」
夜一「そうか… が可哀想じゃの…(ボソッ)」
喜助「え!ナンデスッテ!?今、 サンが可哀想とかなんとか…。」
夜一「さあの。儂は何も言うとらん。」
喜助「そうやっていつもイジワルするんスから…(TДT)」
夜一「ところで、喜助。『とりっく・おあ・とりーと』と申すと、菓子を沢山くれるというのは本当か?」
喜助「沢山…というのは、何処で聞いてきたんスかね?」
夜一「喜助!!とりっく・おあ・とりーと!!」
喜助「ええ!?いきなりッスか!?」
夜一「さあ、菓子をくれ!!」
喜助「あげますけど、そんなに沢山は無いッスよ…。」
夜一「なんじゃと!?菓子が沢山もらえないとな?」
喜助「そうッスよ!お菓子を沢山あげる行事じゃないッスもん。」
夜一「…浮竹がのう…そう言っておったのじゃ。」
喜助「浮竹隊長ッスか!?そりゃあ、聞いてきた相手が悪いッスよ!」
夜一「そうかの?」
喜助「浮竹隊長だったら、そんなことしなくても沢山菓子をくれるんじゃあないッスかね〜?」
夜一「(!o!)オオ! そうか!そうじゃの♪邪魔したの!」
喜助「ふぅ…。ったく!!」

夜一「浮竹!『とりっく・おあ・とりーと』じゃ!!」
浮竹「お!四楓院!久しぶりじゃないか!」
夜一「だから、『四楓院』はよせ!照れる!!」
浮竹「何だ?何か用なのか?」
夜一「そうじゃ!『とりっく・おあ・とりーと』って言うと菓子を沢山くれるんじゃな?浮竹。」
浮竹「そうじゃなかったのか?まあ、菓子はいっぱいあるから持っていけ!四楓院!」
夜一「『四楓院』は止めぬか!何度言わせる!」
浮竹「ああ、スマン(笑)」

喜助「夜一サンと浮竹隊長…なんか2人でハロウィンを間違って理解してる気がするッスね…。
   だいたい、ただの『カボチャ祭り』じゃないッスか…。」


浦原喜助…アナタも間違ってます(笑)