トリック・オア・トリート
「「明日は友達の家でハロウィンパーティーがあるんだよ!!」」
ユズちゃんとカリンちゃんに言われ、「あ、明日はハロウィンなんだ」と気付いた。
一護も「なんか井上たちがやたらと盛り上がってて、俺も誘われた」と言ってたっけ。
明日は、たしか喜助さんに「31日の夜、ゴハンを食べに来て下サイね〜♪」と言われてたから、
何かハロウィンらしいお菓子でも買っていこうかと
は思った。
明日のハロウィンのお菓子を買い、
は家路につく。
きっと明日は、ジン太君やウルルちゃんが「トリック・オア・トリート」と言ってお菓子を強請るかなと
そんな光景を楽しみにしながら、ふっと喜助の顔が頭をよぎった。
(『トリック・オア・トリート』って『お菓子をくれなきゃ、いたずらするぞ!』って意味だけど…。
…そういえば、最近の喜助さんって、ちょっとイジワル…よね?)
本当にイジワル…というワケではなく、何故か自分のココロにちょっかいを出すと言った方が正しいのか、
核心に触れるようで触れない、優しいのにちょっとだけイジワル…みたいな。
それはまるで「私の気持ちを見透かされている」ようでほんの少しだけ悔しかったりもする。
(喜助さんは、私の気持ちなんてすでにお見通しなんだろうな…。)
でもその気持ちを直に喜助に言えない自分がいて、それはそれで苦笑する。
なぜなら「喜助さんは優しいから、自分の相手をしてくれているだけ」と思うから。
でもココロの隅では「自分のことを好きでいてくれている?」と思うのも事実。
そんな自分に喜助はちょっとだけ囁いてみたり、手を繋いでみたり、色々とちょっかいを出してくる。
それが
にとっては嬉しい反面、どうしたらよいのか分からなくなっている。
(そんな喜助さんも嬉しいんだけど…なんか…ね…。)
結局は惚れた弱みなんだよね…と思いつつ、
は床についた。
*
「こんばんは〜。」
31日の夜、
は「浦原商店」を訪れる。
店の外、中にはハロウィンらしき飾りは一切無い。
いつもと変わらない風景の中、店の奥から賑やかな足音が2つ。
「「トリック・オア・トリート!!」」
「こんばんは、ジン太君、ウルルちゃん。」
「
!お菓子よこせ!!くれないと!」
「…イタズラするかも…です…。」
「は〜い、お菓子。でもスコッチケーキだけどいい?」
「え!ケーキ!?やったぜーー!!」
ケーキの箱を持って奥へ行こうとしたジン太を、
巨大な影(失礼!)が立ちふさがる。
「駄目ですぞ!ジン太殿!!
殿にちゃんとお礼を!!」
「い、言ったぞ!!」
「いーえ!聞いておりませぬ!!」
テッサイがジン太を持ち上げ、
の前に置くと
「さ、ちゃんと!」と言うので、仕方なく
「…
、ありがと…。」
「
さん…ありがとうです…。」
「はい、二人とも良くできました♪」
ジン太とウルルはバタバタと奥へと走っていった。
「
殿、いつもいつもすみませぬ…。」
「いえ、こちらこそいつもご馳走になってすみません。」
「何を仰います!ささ、早く上がってくだれ!店長もお待ちしております。」
は奥の客間へと通された。
「いらっしゃーい♪
サン!!お待ちしてましたよン♪」
「喜助さん、こんばんは。」
「今日は『浦原商店大南瓜祭り』なんスよ♪」
客間を見渡すと、万国旗に大小のジャックオーランタンがごろごろ。
部屋の中央にちゃぶ台、ちゃぶ台の上には先程渡したケーキとカボチャ料理が多数。
「す、すごいですね!これ全部、テッサイさんが?」
「はい、『南瓜祭り』の意味はわかりかねるのですが、カボチャの祭りだと仰るので…。」
カボチャの煮付けから始まり、カボチャの天ぷら、きんぴら、コロッケ、
かぼちゃサラダ…とにかくカボチャ料理だらけ。
「私、カボチャ大好きなんです♪」
「そ、そうなんスか?」
「はい!喜助さんは、カボチャは…?」
「そうッスね…嫌いではないんスけど、こんなにカボチャだらけだと…。」
喜助はちゃぶ台の上を見て苦笑した。
ジン太とウルルはすでに自分の定位置に座っており、
喜助と
も席に着いた。
最後にテッサイが席に着くと、「それでは始めますかな」と
皆のゴハン・味噌汁をよそいはじめた。
ゴハンはカボチャの炊き込みゴハン、
味噌汁もカボチャの味噌汁だった。
食事も終わりケーキも食べ終わると、ジン太とウルルは眠くなったのか
自分たちの部屋へ帰っていく。
はテッサイと夕飯の後片付けをしていると、
「
殿、店長の部屋へ行ってくだされ。」
「喜助さんの部屋…ですか?」
「はい。」
「じゃあ、片づけが終わったら…」
「片づけは私がやる故、店長の部屋へ。酒の用意をしております。」
「……で、では…すみません…。」
片づけをテッサイに任せ、
は喜助の部屋へと向かう。
襖の前で声を掛けると「どうぞ♪」と明るい声が返ってきた。
「…失礼します…。」
「コチラ、座ってくださいナ。」
「これは?」
「テッサイが用意してくれたんスよ。だから
サン」
「少し呑みまセンか?」と盃を渡された。
テッサイが用意した酒の肴は…これまたカボチャづくし。
「テッサイさん、凝るわね…」と苦笑しながらも、やっぱり美味しい物ばかりだったので
は喜助にも勧めた。
「喜助さん!テッサイさんの料理、本当に美味しいですよ!」
「美味しいのはわかるんスけどね…こうカボチャづくしだと…。」
「そうですか?美味しいんですけど…。」
「そんなにカボチャばっかり食べると…太りますよン。」
ほうら…来た!!
「…馬肥ゆる秋…余計なお世話です!」
「でも…少しふっくらした
サンもカワイイですけどね。」
「………」
どう返答していいかわからなかった
が、喜助をチラッと見ると、彼は余裕の笑み。
酒のせいでそんなことをクチにするのだと
は思い、
自分も何かやり返したくて酒のチカラを借りようと、盃に入っている酒を一気に飲み干すと、
「喜助さん!おかわりください!」
「おっ、今日はいけるッスねえ♪」
喜助は嬉しそうに彼女の盃を酒で満たした。
「…お礼が遅れましたが、ケーキありがとうどざいまス。」
「え!?あ、いえ…。」
「子供達、本当に喜んでたッス。」
「ヨカッタです。」
「それじゃあ、今度は
サンが…。」
「私?」
酒は呑んでいたが少し顔が紅くなっている程度で、まだそんなには酔ってはいない。
は喜助の「今度は
サンが…」の意味が理解できないでいる。
「あの…『今度は…』というのは…?」
「そもそもハロウィンでは、子供達が家々を廻り『トリック・オア・トリート』と言って
お菓子を貰ってくるのが通常ッス。ということは、ウチに来た
サンは。」
「 ? 」
「アタシに『トリック・オア・トリート』と言ってお菓子を強請らないとイケマセン。」
「…私が…ですか?」
「はいナ。」
相変わらず面白いことを言う喜助に少し困りつつも、今宵はハロウィン。
大人の自分でも言ってもいいかなと思い、
は喜助に言う。
「それでは…。喜助さん!トリック・オア・トリート!!」
「それではお菓子を…。おっと、差し上げるお菓子がないッス!」
「はぁ?」
また、始まった!!喜助のイジワル!!
だいたい、駄菓子屋なのに「お菓子がない」って!!
「差し上げるお菓子がないので…イタズラしちゃって下サイ♪」
「…イタズラ…ですか?」
「ハイ、何でも受けるッスよ〜♪」
「…う、う〜ん…。」
は困った。
しかし、今夜こそはいつもの喜助のイジワルに一矢報いたいと思い、
少し酔い気味の頭で色々と考える。
そしてその酔い気味の思考が功を奏したのか、喜助の顔を見つめニコリと笑うと
「では、喜助さん、目を閉じてくださいね…。」
「はいナ♪ あ、『くすぐり』はアタシには全く効かないッスよ♪」
「くすぐるんじゃないですよ♪ ちゃんと目、閉じてますか?」
は喜助の顔の前で手を上下させ、見えていないかを確認すると、
自分の顔を、喜助の顔のすぐそばまで持ってきた。そして、
「えっ?」
喜助は自分の鼻先に柔らかい物を感じた。
手で自分の鼻を押さえ、目を開けると、顔を紅くしながら微笑むマコトの顔。
「
…サン?今…?」
「…びっくりしました?」
酔っていないはずの喜助の顔は、驚くほど真っ赤で。
はしてやったりといった顔をしている。
「え?あ…。」
「いっつも私のこと、からかってばかりなので、お返しですよ(笑)」
「う…。」
「…喜助さん?」
「ア…アタシの帽子は…!?」
被っていたはずの帽子が見当たらない。
探すと、
の手に喜助の帽子がしっかりと握られている。
どうも、目を閉じてキスされたのと同時に取られたらしい。
「
サン!ぼ、帽子を!!」
「駄目です(笑)」
「お、お願いッス〜!」
「喜助さん、耳まで真っ赤ですよ。」
「…アタシが悪かったッス!だから!!」
「フフフ、はいどうぞ!」
喜助は帽子を受け取ると、目深に被り、更に下を向いてしまった。
手は、まだ鼻を押さえたまま。
「…こりゃ…かなり効いたッス…。」
「やった!私の一世一代のイタズラですね♪」
「しかし、
サンにしてはかなりの大胆…。」
「そうですか?もし、そうだとしたら…。」
「きっとお酒のせい…です。」と喜助の盃に酒を注ぎながら
は言う。
喜助も
の盃に酒を注ぎ、改めて乾杯をした。
「来年の…ハロウィンは、アタシが『トリック・オア・トリート』って言うッスよ。」
「たいへん!イタズラされないようにお菓子を沢山用意しないと!」
「ウチは駄菓子屋ッスからね…その辺のお菓子では駄目ッスよ♪」
「それじゃあ、どんなイタズラをされるか構えてないと…ですね(笑)」
「そうッスね…。」
(アタシは負けず嫌いッスから、来年のハロウィンなんて待たないで
アナタに『不意打ち』を仕掛けるかもしれないッス…。)
喜助は眼を細めつつ、
が注いでくれた酒をペロリと舐めた。
FIN :*:・。,☆゚'・:*:・。・:*:・゚'☆,。・:*:*:・。,☆゚'・:*:・。・:*:・゚'☆,。・:*
夜一「どう見てもただのバカップルにしか見えぬのじゃが!(--#)」
喜助「そんなこと、言わないで下サイよ!結構必死なんスから(^^ゞ」
夜一「必死…のう…。」
喜助「そうッスよ!両想いと決まったワケじゃないッスよ〜。」
夜一「そうか…
が可哀想じゃの…(ボソッ)」
喜助「え!ナンデスッテ!?今、
サンが可哀想とかなんとか…。」
夜一「さあの。儂は何も言うとらん。」
喜助「そうやっていつもイジワルするんスから…(TДT)」
夜一「ところで、喜助。『とりっく・おあ・とりーと』と申すと、菓子を沢山くれるというのは本当か?」
喜助「沢山…というのは、何処で聞いてきたんスかね?」
夜一「喜助!!とりっく・おあ・とりーと!!」
喜助「ええ!?いきなりッスか!?」
夜一「さあ、菓子をくれ!!」
喜助「あげますけど、そんなに沢山は無いッスよ…。」
夜一「なんじゃと!?菓子が沢山もらえないとな?」
喜助「そうッスよ!お菓子を沢山あげる行事じゃないッスもん。」
夜一「…浮竹がのう…そう言っておったのじゃ。」
喜助「浮竹隊長ッスか!?そりゃあ、聞いてきた相手が悪いッスよ!」
夜一「そうかの?」
喜助「浮竹隊長だったら、そんなことしなくても沢山菓子をくれるんじゃあないッスかね〜?」
夜一「(!o!)オオ! そうか!そうじゃの♪邪魔したの!」
喜助「ふぅ…。ったく!!」
夜一「浮竹!『とりっく・おあ・とりーと』じゃ!!」
浮竹「お!四楓院!久しぶりじゃないか!」
夜一「だから、『四楓院』はよせ!照れる!!」
浮竹「何だ?何か用なのか?」
夜一「そうじゃ!『とりっく・おあ・とりーと』って言うと菓子を沢山くれるんじゃな?浮竹。」
浮竹「そうじゃなかったのか?まあ、菓子はいっぱいあるから持っていけ!四楓院!」
夜一「『四楓院』は止めぬか!何度言わせる!」
浮竹「ああ、スマン(笑)」
喜助「夜一サンと浮竹隊長…なんか2人でハロウィンを間違って理解してる気がするッスね…。
だいたい、ただの『カボチャ祭り』じゃないッスか…。」
浦原喜助…アナタも間違ってます(笑)