冬の星座

















「プラネタリウムへ行かないッスか?」



いきなりこう言われて、 は驚いた。



「タダ券を貰っちゃいましてね、 サンが良かったらと思いまして。」

「私…なんかでいいんですか?」

サンと行きたいんですよ。本当はタダ券じゃなくて、もっとカッコイイ事言いたいんスけどね。」

「プラネタリウム、行ったことがないので是非!」

「ヨカッタ!それじゃあ決まりッスね。」



「ということは、アタシと サンのデートじゃないッスか♪」と、デートらしく
駅前の喫茶店で待ち合わせることにした。
日時は の仕事の終了時間に合わせ、今度の土曜日の夕方5時。
早めの夕食を二人で食べ、次にプラネタリウムへ行く予定。



「食事は任してくださいナ。」

「本当に楽しみです。」

「アタシも。子供みたいに前の日は眠れなくなっちゃうかもしれないッス。」



顔を見合わして、二人は笑った。





























デート当日。
はお昼で終わる病院の仕事を済ませ、急いで家へ帰った。
黒崎医院を出る際に一心がニヤニヤしつつ に尋ねる。



「いやに、今日は張り切ってんじゃねえか。」

「そうかな?いつもと同じだよ(^^ゞ」

「ふぅ〜ん…( ̄ー ̄)ニヤリッ」

「な、なに?」

「浦原に変なコトされたら、このお兄様に連絡するんだぞ!」

「喜助さんにって…なんで知ってるの!?」

「図星だろ☆」



なんでも一心にお見通しなのが、少々不満であるが、
それは彼なりの心配の仕方。
しかし、そんなに自分はわかりやすのだろうかと
首を捻りつつ家路を急いだ。





























待ち合わせ場所の喫茶店に15分ほど早めに着いた。



「喜助さん…まだ来てないみたいね。」



の出で立ちは、スキニーパンツにオフホワイトのモダンなワンピース。ゆったりとしたネックウォーマーが付いていて、
女性らしく、またスリムなデザインが特徴なカジュアルスタイル。



「『ラフな格好で…』って言われたのはいいんだけど、こんなカンジでいいのかなあ…。」

サン、お待たせしたッス。」

「き、喜助さん!?」



時間の5分前に到着した喜助。
彼の服装を見て は驚いた。
デニムジーンズに白シャツ。その上に細身で丈の短いベージュのトレンチを羽織っただけのラフな出で立ち。
首には以前、 から貰ったエクリュベージュのマフラーが巻かれている。
喜助の私服を見ること自体初めてだったが、それよりも、



「………。」

サン、凄い素敵ッス!あ、ジーンズ!お揃いじゃないッスか♪…って、 サン?」

「え?あ!は、はい…。」

「アタシの服…、変ですかね?ちょっとラフすぎッスか?」



喜助は気づいていない。
ラフな格好ではあるが、180cm以上の長身、蜂蜜色の明るい髪色。
すべてがまるでファッション雑誌から抜け出してきたモデルの如く似合っている。
「外国人?」「モデルかな?」「何あの人?超格好いいんだけど!」等、羨望の声だけがヒソヒソと聞こえてくる。
喫茶店の客は勿論のこと、ウエイトレスまで喜助を見ている。



「 ? よっぽど浮いてますかね?アタシの格好?」

「そ…そうじゃないと思います…。」

「さすがに甚平と羽織じゃあ、 サンと釣り合わないと思ってコレにしたんですけどねえ…。」

「いえ、もう充分すぎる位に似合っててデスネ…。」

「 ? 」

「私の方が、喜助さんに合わないくらい…デス。」



あまりの格好良さに真っ直ぐに喜助を見ることが出来ない は、
顔を紅くして下を向いてしまった。
喜助はまだ状況を把握しておらず、下を向いている の手を取り、



「何を言ってるんスか?とにかく早く此処を出ましょ。
 こんなに素敵な サンを他の男共に見せる必要は無いッスから。」



そう言って、二人は喫茶店を出た。























外に出て、やっと落ち着いた は、喜助のマフラーに目が行く。



「このマフラーって…。」

「はいナ。 サンがくれたマフラーッスよ♪」

「使って頂いてありがとうございます。」

「どうッスか?この服に似合ってます?」

「はい、とっても。」

「ヨカッタ。」









喜助は「食事なんですけど、ここから5分ほど歩いたところッス。」と言って、
をエスコートした。
























 *



























「美味しかったですね。」

サンが喜んでくださって、ヨカッタ。」



喜助が選んだ店は和食の店で、定食なんかもやっている処だった。
高い和食と違って馴染みの料理が並び、味も雰囲気も良かった。



「まぁちょっと雰囲気のいい定食屋って感じなんですけど、味は本当にいいんスよ。」

「本当に。喜助さん、色んなお店をご存じなんですね。」

「いえ〜。出不精なんであまり知らないッス。それに…。」

「それに?」

「フランス料理とかイタリア料理は…どうも性に合わなくて。
 どうせ食べるなら好きな物で美味しい方がいいと思ってあそこにしました。」

「フフ…。」



が笑うので、何か変なことでも言ったかと喜助は思った。



「アタシ、何か変なことでも…?」

「あ、すみません。やっぱり喜助さんだなって思って。」

「 ? 」

「外は洋服ですけど、中身はやっぱり『甚平』ですね。」

「外ばっかり格好つけてるってことッスか?」

「違いますよ!今日、喜助さんの姿を見たとき、あまりの格好良さに正直ビックリしたんです。
 あ、普段が格好良くないって言っているんじゃないですよ?」

サン…。ククッ…。」



喜助が何も聞いていないのに、一生懸命フォローしいる がとっても可笑しくて、
そしてカワイイと思った。



「あ、笑った〜! 真面目に言ってるのに〜!」

「スミマセン(笑)」

「見た目があまりにも格好良かったのに、中身はいつもの喜助さん。それが私は嬉しかったんです。」

「え?」

「有名でお洒落なレストランでも、喜助さんが考えてくださったお店ですから、
 それはそれで嬉しかったと思います…でも」

「…でも?」

「私はいつもの…甚平に下駄の喜助さんが好きなので、今日のお店はとても嬉しかったです。」

「 ! 」



普段の喜助が好きだと言う言葉に、顔がだんだん熱くなる。
でも彼女なりの褒め文句なのかもしれないと思う自分もいて、
喜助の心は少しフクザツになった。



(その言葉、どういう風にとっていいんスかねえ)



今日は服が違うため、顔を隠す帽子がない。
喜助は の手を取り、自分の顔が彼女から見えないよう
の手を少し引っ張るような形で足を速めた。



「あ、喜助さん!?」

「…少し急ぎましょう。プラネタリウムが始まってしまう。」





























夜の回のプラネタリウムだけあって、親子連れ・学生はいない。
ほとんどがカップルだったが、席は半分近く空いていて、見る側にとってはゆったりと星を眺めることが出来た。



「本当にきれいですね…。」

「そうッスね。」

「あ、あれはオリオン座…。」

「オリオン座のベテルギウスとおおいぬ座シリウス、こいぬ座のプロキオンを結ぶと大きな『冬の大三角』になるんスよ。」

「喜助さん、星座に詳しいんですね。」

「そんなでもないッスよ。ただ月や星を眺めるのは好きですねぇ。」

「私も。夜空を眺めるのは大好きです。」

「特に冬は空気が澄んでるから星がよく見えるッス。」

「…こんなに沢山の星があって…。」

「 ? 」

「私たち地球人以外にも沢山の生物がいるかもしれなくて…。」

サン…?」

「そんな砂粒よりも沢山の生き物の中で、たまたま地球に生まれて、たまたま人間で、日本人で…。」



そこまで呟くと、 は頭上の天体ショーを黙って見つめた。
喜助は、暗闇にうっすらと浮かぶ彼女の横顔を静かに眺め、声をかけようとはしなかった。
























 *

























プラネタリウムも終わり、もうすぐ午後10時になろう頃。
ここから の家までは、歩いて20分近くかかるので、
喜助が「夜も遅いから、タクシーでも」と言ったが、



「今日は、天気も良くて星がよく見えるようですから、歩いて帰りませんか?」



に言われる。
喜助は嬉しそうに「それではそうしましょ。」と彼女の手をとった。



「今日はデートッスからね。手ぐらい繋がないと。」



も嬉しそうに喜助の手を握り返した。





















「やっぱりプラネタリウムのようには見えませんけど、オリオン座は見えますね。」

「そういえば サン、さっき話していたことなんですが…。」

「はい?」

「『砂粒よりも沢山の生き物の中で、たまたま地球に生まれて、たまたま人間で、日本人で…』の後は、何が言いたかったんスか?」

「あ、それは…。」



は喜助の手を離し、5〜6歩前へ進むと、クルリと喜助の方へ向いた。



「地球に生まれて、人間に生まれて、日本人で、この空座町に住んで…」

「…ハイ。」



















「喜助さんと出会えたことは…『奇跡』…かな…って思って…。」



















は「ちょっと大げさですかね?」と恥ずかしそうに笑った。
喜助は彼女の言った言葉に驚きを隠せない。















アタシは人間ではない。死神だ。
それが追放され、現世に身を置くことになってもう100年以上になる。
そんな人外のものと出会った事をアナタは「奇跡」と呼んでくれるのなら、
アタシはアナタが「奇跡」と言ってくれたことが「アタシの奇跡」なんじゃないかって思う…。














「大げさなんかじゃないッスよ…」

「喜助さん…!?」

「本当に…アナタと出会えた事は『奇跡』だ…。」



この数え切れない魂の中で、アタシが一番愛おしいと思える魂に出会え、
その魂を有している サンと今を共有できることが「奇跡」ではないと言うのであれば…?



「『奇跡』じゃなかったら、『運命』ってヤツですかね?」

「運命……。」

「アタシは サンが仰る『奇跡』を『運命』に変えられたらいいなァと思ってマス…。」

「奇跡を運命に…。」

「ハイ。」

「…それは…。」



喜助は再び の手をとると、夜空を見上げる。



「あそこの一番明るい星がシリウスッスね。」

「…喜助さん…。」



が名前を呼ぶも、聞こえない(ふり)なのか、喜助は振り返らない。
でも返事をするかのように、喜助の大きな手が更に強く握ってきたので、
も少しだけ手に力を入れた。











FIN :*:・。,☆゚'・:*:・。・:*:・゚'☆,。・:*:*:・。,☆゚'・:*:・。・:*:・゚'☆,。・:*






夜一「(!o!)オオ! 喜助!『でえと』ではないか!!」
喜助「ヾ(´▽`;)ゝエヘヘ お陰様で初デートッスvv」
夜一「で!?接吻はしたのかの?」
喜助「夜一サン!『接吻』って…。なんか響きがイヤラシイッス…。」
夜一「『接吻』の何処がイヤラシイのじゃ?それで、したのか?しなかったのか?」
喜助「そのオバサン的な聞き方はなんスかねえ。」
夜一「…今、『オバサン』と言ったのう…(--#)」
喜助「だだだだだって!そうじゃないッスか!?」
夜一「…まあ、貸しにしといてやる…。それより早く質問に答えぬか!」
喜助「…するワケないッスよ!」
夜一「なんじゃ!まだなのか!」
喜助「だってアタシの片想いッスよ!?そんなことしたら即『終わり』ッスよ…_| ̄|○ガクリ」
夜一「ったく、じれったいのう。」
喜助「…外野は引っ込んでて下さいよ…(`へ´)フンッ。」
夜一「なんじゃあ?儂に対してそのクチの聞き方!?」
喜助「…(○`ε´○)フンッダ!」
夜一「そうか…。せっかく に関するナイスな情報を持ってきたというに。」
喜助「エエッ!?ナンデスッテ…ヨルイチサン!!」
夜一「残念じゃのう〜♪」
喜助「よよよよよるいち…さま?」
夜一「よせ!お主から『夜一様』は気色悪い。」
喜助「 サンに関する情報というのは…ドキドキ。」
夜一「… はのぅ…お主のことを…。」
喜助「(!o!)オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」
夜一「……ここからは有料じゃ♪」
喜助「(゚Д゚)ハァ?」
夜一「ま、情報は自分でさがせ( ̄ー ̄)ニヤリッ」
喜助「えええええええええ〜〜〜っ!?」
夜一「外野は引っ込んでないといけないからの♪」
喜助「……(返す言葉もない)」
夜一「仕方ない、ヒントだけ言ってやろう。」
喜助「(☆。☆)キラーン!!」
夜一「これを知ったら、お主…。」
喜助「…ゴクリ…。」
夜一「…待て次号!!」
喜助「(´ヘ`;)ハァ やっぱりッス…。教える気なんてさらさら無いッスよね…_| ̄|○ガクリ」
夜一「よくわかっておるの(笑)」