「今日はお鍋にしようかと思って。」

「鍋…っすか…。」

夕食を一緒に私のところで食べたいと言う喜助さんの御希望で買出しに出たものの…

「鍋、嫌いだっけ?」

「いや、鍋が嫌いなわけじゃないんすけどね。」

メニューを言ったとたんに何故か少し不満顔。

帽子のせいで上半分は見えないけれど、見える口元が微かにへの字になっていた。

「じゃ、いいよね?白菜…と。」

鍋に必須な白菜を一玉カゴに入れると喜助さんはその白菜を棚に戻す。

「鍋、イヤなの?」

「だから鍋がイヤなんじゃないんすけど。」

そう言って1/8の白菜をカゴに入れなおした。
野菜はいっぱい入れたいなと思ってもやしやら葱やら人参、きのこ、ありったけの野菜をカゴに入れる。
入れる度に見える口元のへの字がどんどん強くなる。

「野菜が嫌い…とか?」

「野菜だって嫌いじゃないっすけど…。」

何が不満なのかわからないままカゴを乗せたカートを押す。

「あ、牡蠣なんかもこの時期いいかもね。少しだけ火を通して…。」

「牡蠣…っすかあ。」

並んでいる牡蠣を一通り見て一つのパックを手に取った。

「これならいいっすよ。」

「牡蠣の良し悪しがわかるの?」

「そんなのわかりません、でもこれっすね、絶対。」

何だかわからない自信満々な言葉で押し切られて少なめの牡蠣のパックをカゴに入れた。
それでもなんとなく不満顔はおさまらない。
不満…というよりは不機嫌に近い顔。

「…本当はもうウチで食事するの嫌なんじゃない?」

不機嫌な顔の理由なんてそれくらいしか思いつかない。
誘ったくせにそんな顔するなんてちょっとな…なんて今度はきっと私が不機嫌顔になっているに違いない。
無言でカートを押していくと

さんところの土鍋って大きいっすよね。」

少し離れた後ろから言う彼の言葉は…いつも謎っぽい。
意味は深いんだろうけど、最初の一言で何が言いたいかなんてわかったことがない。

「…そうだね。4〜5人分はできるかもしれないね。」

喜助さんの言葉に返事はするものの、顔は見ない。
見ないまま、もうどうでもよくなってしまった鍋の市販のつゆをポイッと適当に入れる。

「ほ〜ら、それだって…。」

入れた市販の鍋のつゆをまたまた棚に戻す。

「何?」

「どう見ても4〜5人分じゃないっすか。」

「だから?」

結論を言わないこの人の悪い癖になんだか少しイラっとした。

「大きい土鍋にたくさんの材料、…こんなにあったら さんその後どうします?」

「あ〜…そうだよねえ、確かに多いね。一護君とか夜一さんとか呼ぶ?」

「ほ〜らやっぱりだ。」

への字になった口元から溜息が漏れた。

「?」


「みんなで鍋がしたいなら、別にアタシの所だってよかったんすよ。」

「それじゃあ今から喜助さんのところに…」

そこまで言ったらカートを奪われ、腕を捕まれお鍋が売っているコーナーまで引き摺られるように歩いていった。

「痛いってば…さっきから不機嫌でいったいなんなの?」

「アタシはアナタのウチで食事したいって言ったんすよ?別に他には誰も要らないっていう解釈を…どうしてできないんすかねえ。」

こちらを見ることなく二人分に丁度いい小さい土鍋を一つ棚から取ってカートに入れた。

「…それじゃあさっきから不機嫌だったのは鍋が嫌なんじゃなくて…」

「“二人”…でいたいとか思っちゃあいけませんかぁ?」

視線は土鍋に集中…
もしかして…

「照れてる?」

そういう話に照れる人だとは思わなかった。
軽そうで、テキトーで、感情まじえて物事を話すところなんて見たことなかった。

「いけませんか?」

カランと下駄の音をさせてゆっくりと歩きだした。
拗ねているような、照れているような、羽織の背中がそんなふうに見える。
何で照れているのかとか、どうして二人っきりで私のところで食事したかったのかとか…聞きたいことは山ほどある。
今が聞き時かもしれないけど…

「待って!」

羽織の袖を少しだけ掴んで歩くのを止めた。

「なんすか?」

「あの…鍋用の小さい器…買わない?二人分。」

控えめに僅かに見える帽子の奥の瞳をジッと見つめてみれば
少し驚いたように喜助さんは掴んだ袖を見た後、私を見てニンマリと笑った。

「それじゃあ…あとお箸も買っていいっすかね、 さんの部屋のアタシの分のお箸。」

そう言いながら袖を掴んだ手を大きな節くれだった手で包んでお箸の売り場までゆっくりと歩いた。







 



「峠の茶屋」の風様より頂いた喜助話でございますvvv
勝手に画を押しつけたら、こんな素敵な「ひね喜助」を頂戴いたしましたvv

こんなカンジにひねたり拗ねたりする喜助はバッチコーイですよね♪
くっそう…萌える…!!

MY食器を買うんなら一緒に住んじゃえばいいジャン!
なんていうツッコミを心の中でしつつ、
二人で鍋ッスかぁ…vv
(夜一サン呼んだら、ちゃんこ鍋クラスの量を用意しないと!(笑))

毎度素敵な話をありがとうございます!!
いろんな意味でお世話になっております。
これからも構ってやってください!m(__)m