「Place to which I return」



 

 

 

 

 

 





藍染との一件から一週間ほど経った頃、
破面のワンダーワイスに胸を貫かれ、地に落ちていった十四郎は、
四番隊のお陰で一命を取り留めた…。
四番隊の卯ノ花隊長が言うには「思っていたよりは早めに完治」したようであったが、
それは隊長である十四郎の生命力の強さ・大きさのお陰だったのだろう。


総隊長である山本元柳斎は、特別救護班である「四番隊第零班」の治療により
まだ治療中ではあるが、だいぶ回復してきたようだ。
(但し、藍染に放った「破道の九十六 一刀火葬」で左腕は失ってしまったようだが)


十四郎の親友であり想い人である「 」は、その「四番隊第零班」の班長であるため、
まだ総隊長のそばを離れないでいるらしく、十四郎は彼女の顔を拝んではいない。
第零班の班長である は十四郎の専属救護班でもあり、ほぼ毎日のように顔を合わせていたのだが、
今回の戦いの件で、十四郎が尸魂界を出ていく時も、四番隊はとても忙しく、
もうどれ位会っていないのかと、十四郎は雨乾堂の自室で池を見ながら思った。





「「隊長、失礼します。」」
「仙太郎と清音か。入っていいぞ。」





仙太郎と清音が十四郎の前まで来たが、
いつも持ってきてくれるはずの薬を2人は持っていない。





「お、薬はどうしたんだ?」
「今日から専属救護班が来るそうで…「隊長! 班長が今日から来て下さるそうですよ!」
「このアマ!俺が隊長と話をしてんだよ!」
「何よ!大事なこと先に言わないで、チンタラ話してるからじゃないの!!」
「あ〜、わかったわかった!頼むから少し静かに話してくれないか?」
「「し、失礼しました!!」」





仙太郎と清音は雨乾堂を出てからも、ギャンギャンと騒いでいる。
十四郎は「全く、相変わらずだな…」と思いながらも
いつものように穏やかな日々が戻ってきたことに感謝しつつ
今日一番の楽しみである彼女の訪問を心待ちにした。





「…何時頃来るんだろうな… は…。」





外では陽が少し傾きかけた頃だった。













































昼の隊士達がほぼ帰った頃、十四郎はその愛しい霊圧を感じる。





「浮竹…隊長、失礼します。」
、何かしこまってるんだ?早く入れよ!」





十四郎は、少し嫌な予感がした。
前に朽木ルキアを奪還するために、元柳斎と戦った後、
大量の血を吐き、 に泣かれたことがあった。
その時も彼女は十四郎のことを「浮竹隊長」と呼び、
普段のように「十四郎」と呼び捨てにはしなかったのだ。





「遅くなりました。」
「…久しいな… …って、毎日顔を合わしてたから…まるで長い間会ってなかったみたいだな…。」
「…まずは山本総隊長のご報告を…。」
「そ、そうか…。」





は無表情のまま。





「左腕は無くされましたが、お身体のほうは良好、3日後には任務に復帰予定とのことです。」
「3日後!?そんなに早く大丈夫なのか?元柳斎先生は?」
「特別救護班としてはもう少しゆっくりしていただきたいのですが、
 あのご性格、たぶんこちらの言うことはお聞きにならないかと。」
「そうだな(笑)」
「………。」





まだ表情は変わらない。





「…おーい、 。いい加減機嫌直して欲しいんだが…。」
「………。」
?」
「……………浮竹隊長!失礼します!!」
「えっ?」





は、そう言うのと同時に、十四郎の衿を掴み
思いっきり胸をはだけさせる。
十四郎は何をされているのか理解が出来ない。





!な、何を!!」
「胸!胸を見せて!!」





いきなり自分の想い人に自分の胸を見せろと言われ、顔が紅くなったが、
の表情があまりにも鬼気迫るものがあり、十四郎はされるがままになる。
は胸の中央…ワンダーワイスが腕を貫いた部分を念入りに調べている。





「十四郎!胸は痛くない?呼吸は苦しくない?」
…。」
「何処もおかしい処はないの?」
「…大丈夫。もう平気だ…。」
「でも…。」





の眼には涙が溜まっていて、「やっぱり泣かしてしまったなぁ」と十四郎は苦笑した。
は納得が行くまで確認すると、はだけた衿を直す。
だが手は衿を掴んだままで、そのまま十四郎の顔へ自分のそれを向けると、





「よかった…。」





と一言。
それ以上はただ涙を流すだけで言葉を発しなかった。
十四郎は、そんな を見ながら少し嬉しそうに彼女の頭を撫でる。





「大丈夫だから…な!もう泣くな。」
「隊長だから…いつ何時何が起こるか分からないのも分かってるのよ!でもやっぱり心配で!!」
「だから、今回も大丈夫だっただろ?」
「『今回』だけじゃなくて、ずっと大丈夫じゃなきゃイヤなの!」





は両手で顔を押さえ、さっきよりも酷く泣き始めてしまった。
しかもしゃくり上げる始末。
十四郎は頭を掻きながら「さあ、どうしたものか?」と考えていたが、
「ええい!ままよ!」と の頭を自分の胸まで引き寄せて
彼女の片耳を自分の心の臓あたりに押し当てた。





「ヒック…えっ?…ヒック…十四…郎…?」
「ほら、俺の心臓は、ちゃんと動いているだろう?」





は眼を閉じ、耳を澄ますと、
少し早めの十四郎の心音が聞こえてくる。





「…ヒック…う…ん…。聞こえ…る…。」
「俺は見た目よりは結構しぶといからな。だから大丈夫さ。」
「……ん… ヒック…。」
「それに俺は『帰るべき処』あるから、簡単に死ねんよ。」
「帰るべき…処…?」
「ああ…。」





はやっと泣きやみ、顔を十四郎の方へ向ける。
十四郎は両手の親指で彼女の涙を拭うと、その手で の頬を包む。





「必ず帰らないと、誰かさんの涙で雨乾堂が池に沈んでしまう。」
「 ! それって…私の事!?」
「…どうかな?」





ハハハと十四郎が笑うので。 は少しムッとしたが、
それも刹那、真っ直ぐに十四郎の眼を見つめ、





「それじゃあ…絶対に…雨乾堂が沈まないように、必ず私の処に帰ってきてね…十四郎…。」





と彼に願う。
十四郎は少し驚いたが、すぐにまた笑顔に戻る。





「わかった。約束するよ…。だから…」
「だから?」
も必ず俺の処に帰って来ないとダメだ!」
「 ? 」
「お前がいなくなったら、誰が俺の治療をしてくれるんだ?」
「誰がって言われても…。」
「だいたいな、俺よりも特別救護班のほうが前線に行く機会が多いんだぞ!」





(あー、十四郎の小言が始まった!)
は苦笑しつつも、自分のことを心配してくれることが嬉しく、
つい笑顔で十四郎の小言を聞いていたものだから
今度は十四郎の機嫌が悪くなる。





「ちゃんと話聞いてるのか?」
「うん、聞いてるよ。」
「真面目な話なんだぞ!?」
「うん、分かってるよ…必ず十四郎の処に帰ってくるから…。」
「む…。」
「だからそんな顔しないで…ね?」





十四郎が少し恥ずかしくなって、 とは逆の…窓の方へと顔を向けてしまったので、
は思わず声を出して笑ってしまった。
すると十四郎が急に振り返り





「お前を慰めるつもりが、俺が慰められてるのか?」
「そんなことないよ。ありがと…十四郎。」
「……やっと、普通に笑ってくれたな… 。」
「え?」
「俺は泣いている顔よりも、怒っている顔よりも、笑っている が一番好きだからな。」
「じゅ、十四郎!」





今度は十四郎が嬉しそうに笑った。































 END


























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