「a kitten」
「あれ?猫!」
が十四郎の診察に雨乾堂へ来てみると、一匹の子猫が主の布団の上で丸くなっていた。
「キミはどこの猫ちゃん?」
背中のさすると『ゴロゴロ…』と、とても気持ちよさそうに喉を鳴らす。
そこへ此処の主が帰ってきた。
「おっ、
!来てたのか」
「ねえ、この子猫は…?」
「コイツか?雨乾堂の前で鳴いていたんだよ。腹でも減っているのかと思ってな…」
そう言って、手の中の煮干しを見せる。
「今、食い物を探してきたというワケだ」
「そうなんだ…」
猫は『にゃあ』と鳴いて、煮干しを持っている者の足元へ近づいてきた。
そしてとても美味しそうに、その煮干しを食べ始める。
「十四郎、この猫、飼うの?」
「いや、決めてはいない」
居たければ居ればいいサ…と
猫の背中をさすってやる。
「私だったら…」
「ん?」
「私がその子猫だったら絶対に十四郎の処から出ていかないな」
「え…?」
十四郎の胸が少し跳ねた。
「だって、十四郎だったら、きっと大事にしてくれると思うもの」
「そうか?」
「そしたらね、いつまでもずっと十四郎の話し相手になってあげるよ」
たとえ話とはいえ、十四郎は嬉しかった。
「オレがもし…この子猫だったら…」
「だったら?」
「
の処へ転がり込むかな(笑)」
「私の処?」
「ああ、いつまでも
の帰りを待ってるよ」
「うふふ…ありがと」
二人とも子猫を通して
少しだけ自分の気持ちを伝えた。
子猫はというと、食べていた煮干しに飽きたのか
ころがして遊んでいる。
すると、
は子猫を抱き上げ
「こら、『十四郎』!食べ物で遊んじゃダメだよ」
と言って子猫の鼻に、ちゅっとキスをした。
いきなり名前を呼ばれた十四郎は、少し驚いている。
「私だったらこんな風に子猫と喋って過ごすと思うよ」と
は笑った。
診察も終わり、雨乾堂には主と子猫だけが残った。
「ここにいる間だけ、お前のこと『
』って呼ぼうか?」
子猫は寒くなったのか、『にゃあ』と鳴くと
布団の中へ入ってきた。
十四郎の首まわりが温かいのか、顎の下あたりで丸くなった。
「ふふふ、くすぐったいぞ!
」
十四郎も嬉しそうに、子猫の体温を感じつつ
眠りに入った。
END
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