「cherry blossom」






















雨乾堂の池の周りにはたくさんの桜が植わっている。
その桜は毎年見事な花を咲かすのだが、その桜を見に来る者はあまりいない。









十四郎は桜見物をしようと雨乾堂の外へ出た。
部屋の中から桜を見るのも嫌いではなかったが、
こうして桜の木の下で散りゆく風景を眺めるのがとても好きだった。









あたりは暗くなりかけていた。
その微妙な光加減が桜をいっそう美しく見せているような気がする。









「桜は散り際が美しいと言うが…」
まさにその通りだと十四郎は思った。
その潔い処も理由ではあるが、花びらが舞っているこの空間がなんともいえず、
十四郎の心をくすぐった。





























…と、そこには先客が1名。





























霊圧から察するに
四番隊第零班班長「 」。
そして十四郎にとって一番大事な人であった。





























!」
「あ、十四郎…」
「珍しいな、こんな処で花見か?」
「うん、雨乾堂の周りの桜はとても綺麗だから…」
「そうだな」
「あ、でも此処を見終わったら十四郎の処へ行く予定だったのよ」
「まだ診察に来るような時間じゃないだろ?(笑) ゆっくり花見と洒落込もうじゃないか」




























そういうと、十四郎は散りゆく桜の木々を見渡した。
はその散っている桜の花びらを両手に受け止めようとしている。




























「毎年思うが、此処の桜の散り際は凄いな…」
「うん…、でも少し、もの悲しいね…」
「そうか?」
「今年の桜は今年でお終い。もう見ることはできないわけでしょ。
 そう思うと、この散っていく様がまるで泣いているように思えてきて…」





























なるほど、 らしいな…… と十四郎は思った。
たしかに桜にも命はあるのだ。そして感情もあるやもしれない。
桜吹雪が桜の涙だとしたら、こんなにも美しく儚い涙があるだろうか。





























「でもな、
「ん?」
「この桜はきっと、今年以上の美しい花を咲かせるために散っていくのかもしれないぞ」
「来年の為に?」
「ああ、今年よりは来年。来年よりは再来年。その為の『脱皮』だな」
「脱皮?」
「女性はそうやって毎年毎年、綺麗になっていくじゃないか…。それと同じだよ(笑)
 現に だって年々綺麗になってるだろ?」
「やあねぇ。十四郎、オヤジ臭い〜(笑)」





























本当に年々綺麗になっているんだよ…。
春の桜の如く、あまりの美しさに俺はいつも魅入ってしまうんだ。





























「…郎? 十四郎!」
「え?あ… どうした?」
「『どうした?』はこっちの台詞。ボーッとしちゃって」
「桜に酔ったかな(笑)」
「ふふふ…キザ〜(笑) 春水みたいな台詞ね」









は笑いながら、十四郎の数歩先を歩き始めた。







































…すると、そこへ一陣の風が。







































風は辺りの桜を巻き込んで、 を桜吹雪で包み込む。
桜が彼女を隠してしまうのではないかと思うぐらいに。








































がどんどん辺りの景色と同化していくように思えた。







































そう思ったら、 が消えていくような気がして。
桜の終わりと共に目の前の がいなくなってしまう気がして。







































は「桜」じゃない。
いくら来年更に綺麗なるからといって、俺は次の春まで を待ってなんかいられない。
俺は、今目の前にいる とずっと一緒にいたいんだ。







































!」
「なに?十四…!」





























十四郎は一声叫ぶと、 を背後から抱きしめた。





























「どうしたの!?」
「すまん…本当に桜に酔ったかもしれん…」
「桜に…?」
「ああ…。少しだけな…」
「……うん……」





























桜吹雪の中で二人はただ立ち尽くす。

この桜色の世界で、二人一緒だったら…
次の春まで眠るのも悪くないなと十四郎は少しだけ思った。





























の表情は十四郎からは見えない。





























きっと十四郎と同じ桜色の頬をしているだろう。













































我が桜は
  永遠に
    満開の花を
      咲きにけり-------------------------。
































 END


























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