「deficiency disease」
「ひと月ほど、任務でいなくなるから」
十四郎にそう言って、
は現世へと出かけた。
十四郎専属の救護班とはいえ、彼女は特別救護班のトップ。
いろいろと忙しいのだと自分に言い聞かせてみるものの、
自分の想い人が毎日自分のために、この雨乾堂へ来てくれるのが当たり前となってしまった今、
ひと月も会えないというのは、とてつもなく長い時間であり、十四郎にとって拷問に近かった。
彼女の代わりに薬を届けてくれるのは、十四郎の知らない隊士で、しかも男。
「私の代わりに卯ノ花隊長…『他の者にしてくれ!』」
ただでさえ、
が薬を飲めと五月蝿いのに、卯ノ花が来たら…
考えただけでも恐ろしい。
で、
が決めたのが男性隊士。
たぶん若い女性隊士だと、自分が薬を飲まなかった時に注意もできないと
考えたのだろう(苦笑)
男だろうが女だろうが、
と卯ノ花以外は誰も同じだ(笑)
そんなことよりも、
の来ないこの「ひと月」を
どうやって過ごせばいいんだ?
十四郎は思案した。
だいぶ
に依存してるなあ…と
雨乾堂の窓の外を見ながらフッと笑った。
*
3週間ぐらいたった頃だろうか、
が予定よりも早く帰ってきた。
「十四郎、ただいま〜」
「は、早かったな…」
「うん、予定よりも任務が進んだからね…それに調査任務だったし」
「そうか…」
「これ、お土産。現世で流行っているお菓子みたいだから一緒に食べようと思って」
「あ、あぁ…すまない…」
……?
なんか十四郎がおかしい…?
こんな愛想のない十四郎は…
…もしや具合が悪いのでは!
は即座に思った。
「十四郎、具合が悪いんじゃないの!?」
「……」
「十四郎!」
何かを言いかけようとする十四郎だったが、
やはり止めた…というような顔をして、そっぽを向いてしまった。
「…十四郎?何かあったの?」
「…………………………………………………………笑わないか?」
この人は、何を子供のように…と思ったが、
それは毎度のこと。
は真顔で
「笑わないわ」
と言った。
「…俺の専属救護班になってから、ほぼ毎日、顔を合わせているだろ?」
「うん」
「そりゃあ、たまには任務で一日二日、一週間ぐらい会わないことだってあった……でもな」
「でも?」
「今回のように一ヶ月も会わないことなんてなかっただろ?」
「うん…まあね…」
「…………………」
「十四郎?」
「……毎日
が来てくれるのが当たり前になってしまってな、
今回のように一ヶ月近く会えなくなると、欠乏症になってしまうんだ」
「…ケツボウショウ??」
「そうだ、『
欠乏症』」
は? 私の…欠乏症??
「だからな、…今まで当たり前のように毎日会っていたから
会えないと、毎日何か足りないように感じてきて…」
「うん…」
「気が付いたら、もの凄く淋しくなってきてだな…。
それで……その……久しぶりにお前の顔を見たら…」
「私の顔を見たら…?」
「急に充たされた気分になって………そうしたら、なんか恥ずかしくなってだな……
の顔をまともに見られん……」
十四郎の耳は真っ赤で。
顔も
とは反対の…窓の方へ向けてしまっていて。
は、初め何を言われているのかわからなくて、ポカンとしていたのだが、
なにやらとてつもなく恥ずかしいことを言われたのは理解した…らしい。
でも十四郎の恥ずかしい言葉なんて日常茶飯事のこと。
恥ずかしい言葉…というよりは、十四郎の素直な気持ちが言葉になっただけなのだ。
そんな十四郎の姿をしばらく見ているうちに、
のクチから自然と言葉が出てきた。
「………わたしだって、この一ヶ月近く、ずーーーーっと『欠乏症』だったよ…」
「え?」
「十四郎の体調も気になってはいたけど、それより私も十四郎に毎日『会いたい』って思っていたもの」
「
…」
「だから私は『十四郎欠乏症』。でもそれは今治ったみたい」
「治った…?」
「だって、今目の前に十四郎がいるでしょ。それに……
私が『欠乏している』人に、逆に『欠乏していて、必要だ』って言われたから…」
の顔も真っ赤だった。
今度は十四郎が何を言われているのかわからない様子だったが、
すぐに嬉しさが込み上げてきた。
「
、知ってるか?この『欠乏症』は、なかなか完治しないそうだ」
「…そうね(笑)」
「でも1つだけ、特効薬がある……(笑)」
「私の『欠乏症』も1つだけ特効薬があるわよ」
それは『お互い』のことであって、
他の誰でもない、自分の目の前にいる者のこと。
それだけ互いに惹かれ合っている2人だが
『親友』の域をを超えていない…というか超えられないのだろうか。
(周りからは完全に公認の仲なのだが)
いつもの調子に戻った十四郎。それを嬉しそうに見つめる
。
この病だけは、たとえ卯ノ花でも、尸魂界中を探しても、『特効薬』以外では
治せないだろうと2人で笑った。
END
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