「fill」
- epilogue 05 -
「マズイことは重なるものだなあ…」
は現世の…ある河川敷に寝転がっていた。
今朝までかかった上層部の施術任務、先程までの救護活動に、新人隊員のフォローまでしたおかげで
霊力が限りなくゼロに近い状態でいた。
部下の者に助けられるのを恥と思い、極端に嫌う
は他の隊士達を先に帰らせた。
それが上に立つ者であると思っていたから。それが自分に対する試練だと思っていたから。
しかし回復薬も使い切ってしまって今はない。すべては救護活動に費やしてしまったのだ。
「さっき、上級救護班班長に睨みをきかしたおかげで、完全に動けなくなった(苦笑)
まあ、半日ぐらい眠れば回復するんだけど…」
ここでは眠れそうにないなあ…。しかも起きあがることもできないし。
斬魄刀も自分の霊力が作用するので、使えない状態。
「あー、睡魔が…」
霊力不足で、体が睡眠を要求してくる。
そんな状況で虚の気配がかすかにした。
「まあ、都合良く来るもんだね…」
まあ、あれぐらいの虚だったら、新人死神だって滅却できるでしょうに…
そんな虚にヤラレちゃうんだ…私。
修行がなってないなあ…やはり私は強くなれないんだな…
そんな風に思っていたら、色々な感情がわき上がってきた。
十四郎と春水と一緒に卒院式に出たかったなあ…。
強くなった私を二人に見てほしかったなあ…。
陰で二人の手助けをいつまでもしたかったのに、情けないよね…私。
ごめん…ごめんね…
そして意識が遠のいた。
遠くで自分の名前を呼ばれている気がした。
虚の叫び声と共に…。
*
気が付くと
はベッドに寝かされていて、
それに気づいた零番隊の隊員が
「卯ノ花隊長!
班長が目を覚まされました!」
と告げた。
「
殿!」
「
!」
「
ちゃん!」
卯ノ花、十四郎、春水が駆けつける。
「ここは…」
「四番隊の詰所です。京楽隊長と浮竹隊長が貴女を助けてくださったのですよ」
「京楽隊長と浮竹隊長が…」
二人の顔を見る
。
「京楽隊長、浮竹隊長…申し訳ありま「馬鹿野郎!」」
十四郎が怒鳴り、周りの連中が固まる。
彼が怒鳴るということは、まず無いのだ。
一番驚いたのは他でもない
であろう。
「誰の手も借りずに成長するだと?そんなこと出来るわけないだろう!
俺も京楽も、ここに居る奴全員が皆助け合って成長していくんだぞ!
たった一人で強くなるなんて、そんなこと出来はしないんだ!」
はただ黙って十四郎を見つめる。
「誰からの手助けも拒んで、あんな状態で一人現世にいることが、どんなに心配されて
どんなに迷惑がかかっているかがわからないのか?あんなことでは隊を纏める長として失格だ!」
「浮竹、それは言い過ぎなんじゃないの!?」
春水が十四郎を止めようとした。
「いいんです!京楽隊長!」
「
ちゃん…」
「浮竹隊長の言うとおりです…。結局は自分のことしか考えてなかったのと一緒だったんです」
「なあ…
…」
十四郎がクチを開く。
「俺達はそんなに頼りにならなかったのか?」
「……」
とても悲しそうで辛そうな十四郎の表情を見て、
は胸が締め付けられる想いだった。
「
と一緒にこの護廷に入って、一緒に任務をこなして…そして…」
「そして、俺達がオマエを護りたかったんだよ…ずっと」
「………」
が起きあがって、独り言のようにポツリ、ポツリと話し始めた。
「卒院式の一ヶ月前、院長先生に呼ばれて、『護廷の極秘任務に入らないか?』と言われ…」
「
ちゃんの霊力の高さじゃあ、勧誘されてもしかたないか…」
「正直悩んでた…。私も護廷十三隊の一員として任務をしたかったから。だからその任務を断ろうとしたとき、
先生に『自分の大切な者を護る為にも是非入って欲しい』と言われて。
その時思った。こんな私でもあの二人を護れるのかも知れないって。」
「
…」
「極秘任務ゆえ、学院の在籍記録は消されてすぐに零班に入り、数年後、班長となったけれども、
まだまだ力不足で、もっと強くなりたかった…。強くなってずっと護っていきたかった…。
だから極力接触を避け、自分に厳しく、感情は一切出さないようにしてきたつもりだった。
人の手助けは借りない。喜怒哀楽はださない… …でも…」
「でも…?」
「今回のようなことでは、班長として失格です。」
あのなあ…と溜息混じりに十四郎が話し出す。
「俺は、そんな
に護られたくないぞ!そんな悲しそうな顔をしたお前にな!」
「………」
「苦楽を共にし、笑いたいときは笑い、怒るときは怒る。俺が知っている『
』はそんな奴だ!」
「………」
「卒院式から何十年、こうしてやっと会えたんだ…いつもの
に戻ったっていいじゃないか…」
十四郎の真剣な瞳が
に刺さる。
「
ちゃん…、
ちゃんはもう充分強いよ?でもサ、今度は僕たちにも護らせて欲しいなあ…。
それからね、自分に厳しいことも大切だと思うけど、浮竹が言ったように
『笑いたいときは笑い、怒るときは怒る』これも強くなる秘訣だと思うよ。
楽しいことがあるから、嬉しいことがあるから、人は強くなれるんだと思う… ね?」
「………」
春水が語りかけても…
は喋らない…ずっと下を向いたまま。
そして…
「ごめん… ありがと…ね… 十四郎…、春水…」
「
…」
「
ちゃん…今、僕のこと…!!」
「きゃっ!」
嬉しさのあまり、春水が
に抱きついた。それを見た十四郎が、
「何、ドサクサに紛れて抱きついてるんだよ!」
と言って、春水を
から引き剥がした。
そのやりとりを見て、
は久しぶりに笑った。嬉し涙と共に…。
その顔をいつまでもいつまでも嬉しそうに十四郎は眺めた。
嬉しそうに… 愛おしく…
でも三人が三人とも
「「「自分が盾になる…これからもずっと…」」」
と決意を秘めていたのは…お互いに知らないことである。
END
←back
画面を閉じてmenuにお戻り下さい。
------------------------------------------
ヒロイン設定の長ーいイイワケだと思って読んでくだされば…と(^^ゞ
最後までお付き合いしてくださってアリガトウゴザイマシタ。