「fragrant smell」
「あれ?今までここに春水がいたでしょ?」
十四郎の看護にやってきた
が、雨乾堂の主に言う。
「居たぞ…。でもよくわかるなあ」
「えっ?だって残り香がするもの」
「残り香?そうか?」
「こんなに残ってるのに、十四郎わかんないの?」
がクスクスと笑う。
「春水が来て、一緒になってお酒ばかり飲んでないでしょうね?」
「おいおい、春水と一緒にしないでくれ」
「ウフフ…」
それならばよろしい…と、十四郎に薬を渡し、雨乾堂を後にした。
四番隊詰所へ向かう途中、八番隊詰所の前を通る。
すると風に乗って馴染みの香りが鼻を掠める。
「ん?春水の匂いがする…」
しかも自分の頭の上からするような気が…。
は八番隊詰所の屋根を見上げた。
すると、ほんの少しだけ見え隠れする女物の着物-------------。
いたいた!春水!
は軽くジャンプして春水の居る屋根の上へ移動した。
自分の霊圧と気配を消して、
は横になっている春水の後ろへ廻った。
そして……春水の眼を塞ぐ。
声を出しては誰だかわかってしまうので、ここは喋らずに、ただ眼を塞いだ。
「ん〜?こんなカワイイことするのは誰かなあv」
「………」
「七緒ちゃん!?…そんなワケないね。」
「………」
「
ちゃんでしょ!まったくカワイイことするんだからvv」
「なんでスグわかっちゃうの?」
霊圧も気配も完全に消したハズなのに、春水は簡単に自分を当ててしまう。
「春水〜、なんでわかるの〜?」
「ナ〜イショv」
「教えてくれたっていいのにぃ」
「そういう
ちゃんは、なんでボクが屋根の上にいたことがわかったんだい?」
「匂い…春水の匂いがしたから…」
「臭い?酒臭い?」
「違う違う!『匂い』。香る方だよ(笑)」
春水は少し考えた。
たしかにいつも羽織っている女物の着物には香を焚きしめてはいる……でもそれはほんの少し。
同じ部屋にいる者が気づく程度の香りしかしないと思っていたのに、
は外で…。
しかも屋根の上にいた自分の匂いをこうも簡単に気づくとは……。
「さっき、十四郎の所にいたでしょ?」
「それも匂いでわかったのかい?」
「うん」
があまりにも匂いに反応するものだから、春水は恥ずかしくなって
「そんなに匂うのか〜。ごめんよ、もう少し気をつけるよ…」
と彼女に言う。
しかし
「春水!違うってば!匂いが強いとか、そういう事を言っているんじゃないの!」
「違うの?」
「なんていうのかな〜、いい香りなのね…。春水にぴったりな」
「
ちゃん…」
「だからね、この香りは私にとって春水のイメージなの。
この香りがすると近くに春水がいるような気がして落ち着くのよ…」
なんて嬉しいことを言ってくれるのだろう。
僕の匂いで気分が落ち着いてくれるのなら、ずっとそばにいてあげるのに〜…。
って本命には結構恥ずかしくてクチには出せない春水。
恥ずかしさと嬉しさを隠すために、空を見上げるような仕草をした。
「 ……水。 …春水!」
「ん?何?」
「何、ボ〜っと空見上げてるの?」
「え?あ…。何でもないよ…」
「ねえ、さっきの目隠しで何で私ってわかったの?」
「だ〜か〜ら〜、ヒミツだってv」
言えるワケないじゃない。
『いくら
ちゃんが霊圧や気配を消しても、
ちゃんの香りでわかる』
なんてさ。
僕にとって
ちゃんの香りは、一番好きで一番落ち着く香りなんだよ…。
キミが僕の匂いの事を落ち着くと言ったのと同じようにね…。
「…
ちゃんはさぁ…、何か香りの物をつけてたりしてるの?」
「ううん、何もつけてないよ?なんで?」
「そっか……」
春水は少し紅くなった顔をまた空へ向けてしまった。
END
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