「か弱き強者(つわもの)」





















「ね〜ね〜、オネエチャン。遊ぼうよ〜」
「任務がありますので…」
「んなコト言わないでさ〜。どうせ四番隊かなんかでしょ?」









一人の女性死神が二人の男性死神に囲まれている。
女は、急いでいるらしく先を急ごうとしているが、
二人がそれを邪魔して行かせてくれない。









「任務って『お医者さんごっこ』じゃねーの?」
「ギャハハ!!だったらオレらと『お医者さんごっこ』しよーぜv」
「『お医者さんごっこ』なんてしません!」
「え〜、四番隊じゃないの〜?」
「違いますよ」









男達は女の手首を掴むと無理矢理連れて行こうとした。









「ヤメテください!仕事があるんです!」
「いいから、遊ぼうぜ〜」









女の手から書類が落ちた。
その書類を見ると、『十一番隊』の文字が見える。









「なんだ〜、十一番隊へおつかい〜?」
「なら、オレ達『十一番隊』だから、変わりに持っていってやるよ〜」
「あなた達、十一番隊なの?」
「そ。泣く子も黙る『更木隊』の隊員だぜ〜。だから遊ぼ……」









男達が女の手をさらに引っ張ろうとしたとき、背後に巨大な影が出現する。









「おい…」
「ウルセーな!今忙しい処なのよ」
「おい…」
「んだよっ!(怒)……って…ひゃーーー!」









そこには『泣く子も黙る【更木隊】』の隊長、更木剣八が斬魄刀片手に
無表情で立っていた。









「「ざざざざざ更木隊長ーーーーー!!!」」
「オメーら、十一番隊なのか」
「「ははははいーーーー!!!」」









剣八はひと睨みすると









「ザコが!失せろ!」
「「しっ失礼しましたーーーーーー!」」









二人は脱兎の如く、その場から立ち去った。
剣八は小さく溜息をつくと、残った女性死神の処へ歩み寄る。
すると女は嬉しそうに礼を言った。









「隊長、ありがとうございます!」
「オメーなあ…」





























この女性死神… は十一番隊第四席。
副隊長のやちるを抜かせば『更木隊』の紅一点である。
普段は副隊長の仕事を替わりにこなしたり…まあ、十一番隊の事務関係がメインの普通の『か弱き女性』。
しかし、ひとたび刃を交えれば、そこは『更木隊』。しかも鬼道の達人でもあり、
隊長の更木と互角に戦えるほどの強者でもあるのだ。
しかしそれほどの者が何故四席…?
彼女曰く「三席は一角さんが、五席は弓親さんがいらっしゃるので、空いてる四席で」とのこと。
彼女にとって、チカラや順位は、あまり意味がないらしい。





























「あんなザコぐらい指一本で片づけられるだろうが」
「あの程度なら、霊圧さえ上げる必要もないと思って…」









の言うことも一理ある。
たしかにザコ相手にチカラを出すのはかったるい。
剣八は、自分の隊の席官の顔もわからない下っ端野郎に多少ムカついたのも本音であって。









「オメエはもう少し席官の意識を持ってだなあ」
「持ってますよ。ただ無益な戦いは好きじゃないだけです」
「…ちっ、勝手にしろ!」









無愛想に背を向けると、隊舎へ戻り始める剣八。
しかし後ろに がついてこないのがわかると









「オラ、モタモタしてんじゃねえ!」
「あ、はい…」









急いで足元に散らばった書類をかき集めると
は小走りで剣八のそばへ駆け寄った。



























































隊舎へ戻ると、待ってましたとばかりに
やちるのダイブが を襲う。









ちゃん、お帰りー!」
「ただいま戻りました。副隊長!」
「ねえねえ、何して遊ぶ〜?」
「ん〜、そうですね…」









がやちる相手に真剣に考えているとき、
剣八のクチが開いた。









「やちる、悪りぃが を少し借りるぞ」
「えー、剣ちゃんばっかり〜。ズルイ〜!」
!修練場へ行くぞ」
「え、あっ…まだ事務が残って…」
「そんなの一角にやらせときゃいいだろうが!」
「ええ〜っ!俺ッスか〜(泪)」
「一角さん…ごめんなさい!副隊長、また後で…」









はやちると一角に頭を下げると剣八と共に修練場へ消えていった。









「剣ちゃんって ちゃんのこと本当に好きなんだよね〜つるりん♪」
「『つるりん』は余計じゃ!ドチビがっ!」
「つるりんが怒って『ゆでダコ』だ〜(爆笑)」
「シメるぞ!コラッ!(怒)」







































































修練場には誰もいなく。









「誰もいなくて丁度いい。 !構えろ!!」
「か弱き乙女に剣を向けるなんて…(笑)」
「誰が『か弱き乙女』だ!(笑)」









は斬魄刀を構え、一度目閉じる。
そして次の瞬間、巨大な霊圧を解放した。



















「いい霊圧だ」



















剣八はニヤリと笑うと、 と同じように
自分の霊圧を解放した。
しかし右目の眼帯は外していない。



















「隊長、今日は『眼帯』外さないんですか?」
「まぁ、そのうちな」














剣八にここまで言えるのは尸魂界広しといえど、 だけであろう。
そして剣八が言わせているのも だけなのである。














「じゃ、私から行かせてもらいます!」
「おぅ!何処からでもかかって来やがれ!」














こうして『剣八と 』の鍛錬はほぼ毎日行われるのであった。


















































しかし、今日は何かが違う----------------------
剣八は思った。










!」
「なんですか?」
「オメエ…何かあったか?」









十一番隊で言う「殺し合い」の最中に
相手を気遣うような台詞を吐かれ、 は少し驚いた。









「ふふふ…」
「何笑ってやがる」
「今日は、優しいですね…隊長」
「笑っている余裕があるなら、もっと戦いに集中しろ!」









お互いニヤリと笑うと、斬魄刀を構え直し
戦いに興じた。










































































かれこれ1時間は経っているだろう。
二人の「殺し合い」はまだ続いている。
剣八はすでに右目の眼帯を外し、全力を出しているようだ。



















---------と、その時



















が斬魄刀を振り上げ、先に仕掛けてきた。
それを簡単に振り払い、逆に剣八が に斬魄刀を振り下ろす。









このぐらいの遣り取りなら目を瞑ってでも避けられる-----------そう思っていた。


































「こほっ」


































のクチから小さな咳が一つ
そのたったひとつの咳が刹那の判断を遅らせた。









今まで、剣八と「殺し合い」という名の鍛錬をしてきて
怪我らしい怪我をしてこなかった だったが
今回ばかりは、ただの怪我では済まされないと思った。


























なにしろ、相手は霊圧を全解放した十一番隊隊長なのだから。


























まあ十一番隊にいる以上、怪我は免れないか…。
でもただの怪我で済めばいいけど…。
そんなことを思いつつ、剣八の斬魄刀から目を逸らしきつく瞑った。

















































しかし…

















































頭上から降ってくるはずの斬魄刀が降ってこない。
恐る恐る目を開けると、目の前に血の雫が一つ、二つ、三つ…。









自分は何処も怪我をしていない。
でも何故、自分の目の前には血が滴っているのだろうか?

そのまま目線を上げると、己の斬魄刀を自分の左腕で止めている剣八の姿があった。



















「た、隊長!」
「この馬鹿がっ!」
「えっ?」
「体調が悪りぃなら、なんで初めから言わねぇ」



















剣八は初めからわかっていたのだ。
違和感のあった霊圧も、小さな咳も
すべて知った上での「殺し合い」だった。



















「こんなことじゃあ、オメエ、死ぬぞ」
「す…すみません」
「しょうがねえ奴だな」



















小さく溜息をつくと、剣八は、怪我をした左腕で
ひょいと を担いだ。



















「うわっ!隊長の怪我のほうが酷いんですから!降ろしてください!」
「うるせえ!病人は黙ってろ」
「…でも、血が…」
「んなの怪我の内に入らねえ」
「私も病気の内に入りませんから」
「この熱が『病気の内に入らねえ』のかよ」
「う……」



















とりあえず、隊舎へ戻るか…と
剣八は を担いだまま歩き出した。


















































「はい?」
「なんで無理して鍛錬につきあう?」
「…大丈夫かなあ…と(笑)」
「阿呆!」
「泣く子も黙る『更木隊』の一員ですからね。虚は具合が悪くても待ってくれませんから(笑)」



















剣八は鼻でフフッと笑った



















「オメエは見た目『か弱そう』だが、中身は強えな」
「そんなことないですよ。隊長よりは、はるかに弱いです」
「咳一つで、『殺し合い』を躊躇うなんざ、オレもまだまだだ…」
「え?隊長、何か仰いましたか?」
「うるせえ!」







































隊舎へ着くまで、黙々と歩く剣八。
惚れた女には一生かかっても追い越せねえなと
少々不満ながらも、仕方がねえかと心で思った。







































「ったく、強ええ女も困ったもんだな(笑)」
































 END


























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