「心の笑顔」
泣く子も黙る『十一番隊』、通称『更木隊』。
斑目一角は『第三席』としてこの隊に所属している。
スキンヘッドと隈取りを思わせる目尻の紅、
気性の激しさと更木隊で二番目に強い死神として周りからは恐れられている。
だが人望もあり、六番隊の副隊長である阿散井恋次をはじめ、多くの死神から慕われている。
しかし、女性死神からは「コワイ」の一言でかなり避けられているのも事実。
「
もよく十一番隊に移動する気になったよね」
「そっかな?」
十一番隊第六席の
は、もともと四番隊に所属していた。
四番隊に居ながらにして戦闘能力が高いのを更木が気に入り、
『オメエが良けりゃあ、十一番隊に入れ』と言われ、一つ返事で移動した。
女っ気の全くない十一番隊。その隊に女性が。しかも治療任務もできるとくれば隊員連中は手放しで喜んだ。
そんな移動から約三ヶ月、やっと落ち着き…、とはいえ、戦闘要員 兼 救護 兼 やちるの遊び相手 兼 事務…と
毎日が忙しい中での、束の間の時間。
は隊の違う友人死神と昼ご飯を食べていた。
「十一番隊で、イヤなコトとか辛いコトとかないわけ?」
「別に〜 …あっ、一つだけあった」
「何?」
「斑目三席がね… 冷たいのね…」
「また『斑目三席』の話ぃ〜?」
そう、
が十一番隊へ来た理由、それは
『斑目一角に会いたい』
ただそれだけ。
まだ四番隊にいたころ、例の旅禍の一件で一角は四番隊に世話になっていた。
そのときの担当が
。
はじめは噂通りの怖い人なのだろうと思っていたが、あんな大怪我で運ばれてきたのだからそれどころではない。
一角も自分の為に必死で治療をしてくれる
に心を開き、退院のころにはかなり気さくに話をしていた。
そんな一角に好意を抱くようになった
。
そして今回の移動の話。
は少しでも一角のそばに、少しでも役に立てればと即答で移動に応じたのだ。
しかし、十一番隊で最初に一角に言われた言葉は
「なんで十一番隊に来やがった」
はショックだった。
驚かれることはあるとしても、まさかあんな言葉をかけられようとは思っても見なかった。
「いいかげん、あきらめたら?やっぱり噂通りの『怖い人』なのよ」
「そんなことないよ。四番隊に入院していたときは、とても優しくて面白い人だったもの」
「それは、自分が入院している立場だったからじゃないの?」
「違うよ!あれが本当の斑目三席なんだよ…きっと!」
「相変わらずガンコだね〜。ま、あまりムリしないでね」
休憩時間も終わろうとしていたので、友人と別れた。
は午後の事務をすべく、十一番隊詰所へ向かった。
任務をなんでもこなす
ではあるが、戦闘要員としての任務は多くはない。
彼女が外に出るときは、よほど大きな任務の時か緊急事態の時のみ。
事務の嫌いな更木と遊んでばかりのやちるの尻拭いがほとんどである。
それでも
が作業をすれば彼らの三分の一の時間で終わらせてしまう。
「午後からは、残った事務と…草鹿副隊長との遊びかなあ?少しは鍛錬もしたいんだけど…」
詰所へ入ると、更木に呼ばれる。
「
、今日の事務作業は終いだ」
「え?」
「午後は好きな事していいぞ。なんなら半休とってもかまわねえ」
「草鹿副隊長…は?」
「あ?やちるか?アイツは弓親と遊びに行ってる」
今日のターゲットは綾瀬川五席ですか…(^^ゞ
「でもたしか書類はまだあったと思うのですけど」
「一角にやらせてる」
「えっ!?斑目三席にですか!?」
事務机に目をやると、つるりーんな頭…失礼、一角の頭が見え隠れしている。
「なんで斑目三席が?」
「ウ…ウルセエ!」
「やちるとの賭けに負けたんだとよ。」
「罰ゲーム…ですか…」
「仕事が無くなったんだから、早く帰りやがれ!」
普段から
に冷たい一角が、さらに機嫌を悪くする。
しかしここで
は何かを考えたようで、更木に申し出た。
「隊長、私も手伝えば早く終わりますよね」
「それじゃあ、罰ゲームの意味がなくなるだろ」
「その代わりといっては何ですが、斑目三席を少々お貸し願えませんでしょうか?」
「…一角を?」
「はい、体も鈍ってきたころですし、稽古をつけていただきたいと…」
「テ、テメエ!何勝手に言ってんだ!!」
「…いいぜ。終わったら好きに使え」
「ありがとうございます!」
「た…隊長……_| ̄|○ガクリ」
がもの凄いスピードで事務作業をこなし始めた。
二人で作業をしているというよりは、
一人で着々と事務を終わらせている。
一角はただ呆気にとられているようだった。
事務作業も終わり、
と一角は詰所裏の鍛錬場にいる。
「よろしくお願いいたします」
「…あー」
素っ気ない返事。
は悲しくなったが、ここで凹んではいられないと思い斬魄刀を構えた。
しかし一角は構えるどころか、相手に背中を向けてしまった。
「あー、ヤメヤメ!やっぱ他をあたってくれ…」
そう言った一角の背後からもの凄い殺気。
「何?」
「斑目三席、早く構えてください…死にますよ?」
「オメエ……」
が斬魄刀を振り下ろす。
しかしそこは第三席、簡単にかわして
の背後から彼女の動きを封じた。
「は、放してください!」
「何を言ってやがる!今の殺気はただごとじゃねえぞ!」
「本気でやるのは斑目三席の鉄則じゃないですか」
「とにかく、斬魄刀を降ろせ!」
降ろす…というよりは、一角が
の斬魄刀を取り上げた状態。
「ったく…」
「そんなに……」
「あん?」
「そんなに、私のことがキライですか?」
「はぁ?」
一角は
の言っている意味が全くわからない。
「突然、何を……?」
「私は…私は…、斑目三席の役に立ちたくて…。その為にはもっと強くなって…
少しでも認められるようにと思って…。そして…そして…」
「…おい」
「四番隊にいたときに、とても優しくしてくれたのが嬉しくて楽しくて…」
「おいっ!」
「私は斑目三席が好きだから…今の状況が悲しくて、辛くて…」
「
ッ!!」
自分の名前を呼ばれて、
はハッとした。
「斑目…三席…?」
「…あー、とりあえず『斑目三席』はヤメロ。『一角』でいい」
「…は…はい…」
「それからな…」
「………」
「俺は一言もオメエの事、嫌ってるなんて言ってねえぞ」
は少しビックリしたが、顔には出さなかった。
嫌っていないなら、今までの態度は一体何だったのだろうと考えると納得がいかない。
さらに一角が話を続ける。
「こんなアブネエ隊に入るんじゃねえってコトだよ!」
「はぁ…」
「『はあ…』って、意味わかってんのか?」
「どの隊も危険なときは一緒ですし…」
「一緒じゃねえ!十一番隊だぞ!『更木隊』だ!此処にいる以上、命の保証が低くなるんだよ!」
「…私がこの隊に入ったことは、邪魔でしたか?」
一角は、マズイと即座に思った。
十一番隊の六席なら、強い部類の隊士である。
それを自分は『此処にいる以上、命の保証が低くなる』と言ってしまった。
そんなことは百も承知のこと。それをあえて言ってしまったと言うことは、
『お前は邪魔だ』と取られても仕方がない。
「えっ、あっ、そっ…そうじゃねえっ!」
「更木隊長に『十一番隊に入らないか』と言われて、少々舞い上がっていたのかもしれません。
…そうですよね、必ずしも皆さんが迎えてくださるわけじゃないですし…」
「だからよ、誰が邪魔だなんて言った!?」
大声を張り上げて一角が否定をしたので、
は喋るのを止めてしまった。
「此処に居たら…護りきれねえじゃねえか…」
「え?」
「黙って護ろうと思ったのによー。
十一番隊に入ってくるし…。おまけに席官だしな…」
「さっきから何を…」
「しかも先に告られちゃあ、俺の立つ瀬がねえ」
「『先に告る…??』」
はしばらく考え込むと、「あっ!」と一声叫んだ。
「そそそそれじゃあ…」
「…鈍いんだよ、オメーは!」
「だって、いつもいつも怖い顔して…」
「あん?顔が怖えのは、元々だ」
「う…」
一角は溜息をつくと、さらに進める。
「…まあな、意識して睨んでいたのは確かだ。
もしかしたら嫌がって四番隊に戻るかもって思ったんだけどな。
でもそんなタマじゃねーしよ…。だから平気で居られるのかもしんねーけど…」
「………」
「でもよ、ホントは笑顔でいたんだぜ…」
「…え?」
一角はニヤリと笑うと、自分の心の臓を親指で指し示した。
「俺の此処はいつも笑顔で迎えていたんだよ」
「そ…そんなの…」
「あ?何か文句あっか?」
「そんなのワカラナイじゃないですか!」
「気づけよ!鈍感!」
「どっ、鈍感!?」
「…つーか、これ以上、説明させるなっつーの」
「?」
「結構恥ずかしいコト言ってるんだぜ…これでもよ〜」
一角は少し頬を赤らめながら、ニカッと満面の笑みを
に向けた。
それは
が十一番隊で初めて見た一角の笑顔。
心の笑顔が初めて表に出た瞬間だった。
END
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