「ointment」






















「はい、お終い」









今日の診察も終わり、 は十四郎にそう告げる。









「いつも悪いな」
「悪くなんかないわ。最近は調子いいみたいだね」
「そうだな、近頃は熱も出なくなったしな」
「でも無理はダメだからね」
「わかってるよ」









そんな会話の途中で、『あっ!』と小さく声を出すと
は思い出したかのように十四郎の手を掴む。









「なっ、なんだ?」
「あ〜、やっぱり〜」









人の手を掴んで何が『やっぱり〜』なんだ?
十四郎は少し困惑した。









「手荒れ…酷いよね」
「手荒れ?」
「うん、前々から思っていたんだけど、今度言おうと思っていたら今日になっちゃった」









は死覇装の袂から、小さな蓋付きの入れ物を出す。
蓋を開けると中には薄黄色のものが入っており、それを指にすくって十四郎の手に塗り出した。









「これね、手荒れの軟膏なの。私が調合したんだ」
「へぇ〜」
「自分でも使っているんだけど、結構効くのよ」









『男の人は無精だから』と言いながら十四郎の手や指にまんべんなく擦り込んだ。









「あ、指のところ、あかぎれになりかけてるし」
「どこだ?」
「ここはささくれになってる〜」
「ホントだ(笑)」
「も〜、痛かったり気になったりしないの?(苦笑)」









は軟膏を塗ったついでに、掌や指のマッサージをはじめた。
掌のマッサージは驚くほど気持ちが良く、あまりの気持ちの良さに目を閉じてしまう。









「うふふ、気持ちいいデショ」
「ああ、ビックリした」
「手はね、一番使う部分だから、こうしてたまにマッサージしてあげるといいのよ」
「本当に気持ちのいいものだな」
「でもね、不思議と自分で揉むより、他人に揉んでもらった方が気持ちいいのよね〜」
「…そうか」









十四郎は の手を掴むと、さきほどとは逆に彼女の手を揉みはじめた。









「十四郎〜、私はいいよ…」
「一番使う部分なんだろ?じゃあ、 も手が凝っているハズだしな。それに…」
「それに?」
の手は、いつも冷たいから、こうすれば少しでも温まるだろ?」









そう言うと揉むチカラも少し強くなってくる。
は黙って十四郎に揉まれていた。




























「指…細いな…」
「そんなことないよ…」
「こんな細い指と手で死神達の命を救っているんだよな…」
「十四郎だって、この手で尸魂界や現世を護っているじゃない」
「俺はそんな大それた事なんかやってないさ」
「私こそ、そんな大それた事なんてやってないけど…」
「けど?」





























は十四郎の手を逆に掴むと、真っ直ぐに彼の目を見て





























「私の命を懸けて、十四郎の病気を治したい」





























彼の手をギュッと握って言い放った。
十四郎は少し驚きつつも、最愛の人の言葉に感謝を込めて





























「俺は、 を一生涯護り続けるよ……ありがとな。」









と言って、柔らかく微笑んだ。






















































「命を懸けなければいけないのは俺の方さ…
 こんな俺に『命を懸ける』と言ってくれるなんて…」





























十四郎の鼻の奥がほんの少しだけツンとした。
































 END


























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