「想いを伝えて」
ケッケイゲンカイって何だろう?
昔、母親に「大きくなったら、この血を『木の葉』の為に役立てるのよ」とよく言われた。
しばらくして、アカデミーに入学した。
その頃には、血継限界は完全に覚醒していた。
私の一族の血継限界…。
それは他人の考えていることをすべて読み取ってしまうこと。
読み取りたい相手をほんの少しだけ触ると、心の奥底がすべて見えてしまう。
たとえ、頭の中でデタラメなことを考えたとしても、本心を見抜いてしまう。
このチカラのせいで、幾度となく里の者に気味悪がられたことか。
同じ血継限界でも名門の「うちは一族」は指をさされないのにね。
アカデミーに入ってすぐにクラスの子たちは私を気味悪がった。
そりゃあそうよね。自分の本心を他人に見抜かれるなんて私だってイヤだもの。
別に友達なんていなくても、忍者にはなれるわ。
ただね、自分が忍者になってもしも子供達を教える立場になったら
能力で差別しないように教えたい、自分と同じ思いを持つ子を作りたくないと思う。
授業が終わって、アカデミーの演習場をボーっと見ていたら
一人でトレーニングをしている子がいた。
「あれは…うちのクラスの…」
そうだ…たしか「マイト・ガイ」っていう名の子だ。
彼もクラスでは除け者扱いされてるんだよね…。
体術はすごいのに、幻術がほとんどダメだから
『体術馬鹿』とか言われてるようだ。
授業はとっくに終わっているのに、一人であんなに一生懸命練習している事なんて
クラスの皆は知っているのかしら?
私が帰るには、彼がトレーニングをしているすぐそばを通らなくてはならない。
別に彼のことを『好き』でもないし『嫌い』でもない。
ただクラスが同じだから、一言声を掛けて帰ろうと思った。
彼は私のことを気味悪がったりしないから。
「ガイくん、お疲れさま。先に帰るね」
「あっ、
さん!」
私に気が付くと、ガイくんはニコニコしながら寄ってきた。
その笑顔がなんか眩しくて、思わず顔を背けてしまった。
「ボクも終わろうとしてたんだけど、一緒に帰りませんか?
ボクの家って
さんの家の方向と同じなんです」
「え?」
凄いビックリした。
私を避ける者はいても、私と一緒に帰ろうなんて言う人は
今まで誰一人いなかったから。
「一緒に帰るの…都合が悪いですか?」
「気味悪くないの?」
「?」
「ほら…私って人の心底が読めるから…」
「それって凄いチカラだよね!」
ガイは目を輝かせた。
は初めて自分のチカラをそんな風に言われ戸惑った。
でもそれは嬉しいことを言われたのだと理解して
ほんの少しだけ微笑んだ。
「あ!初めて
さんが笑うのを見た!」
「『
さん』じゃなくて『
』でいいよ」
「じゃあボクのことも『ガイ』でいいよ」
二人はとても嬉しそうに笑った。
仲良くなって数年後、二人は中忍になった。
さすがに馬鹿にする者もいなくなった。
にもガイにもそれなりに仲間はいるし、充実した毎日を送っている。
二人の付き合いはというと、住居が近いせいか、たまに外で出会うことがあった。
そうすると、どちらかの家の屋根の上で任務の話や普段の出来事などを
喋って楽しい時間を過ごした。
は自分の血継限界について話すのはあまり好きではなかったが、
ガイにだけはなんでも話すようになっていた。
「
!俺の夢が何か、読んでみないか?」
「え?でも…」
「前から一度、
のチカラを見たかったんだ…。ダメか?」
「ダメじゃないけど…ただね、相手を見るだけでその人の考えがわかるわけじゃないの」
「ふんふん…」
「相手の…どこでもいいからちょっとだけ触って、術を唱えると見えてくる」
「おお〜!やっぱり凄いチカラだな!」
自分の本心を読めなんて言う人はガイぐらいだ…と少しは呆れもしたが
本人がどうしてもというので、仕方なく見ることにした。
「じゃあ…いいのね」
「おぅ!」
ガイの手を掴み小さな声で術を唱える。
するとガイの本心が見えてくる。
オレ ハ 上忍 ニ ナッテ カカシ ヲ オイコシテ ヤルンダ!
幻術 ハ 苦手 デモ 上忍 ニ 絶対 ナル!
「ガイ…あなたって…」
「何が見えたのだ?」
「普段叫んでいる事と、本心が全く同じなんだけど…?」
「…?… そりゃあそうだ!俺は『裏表』がないのが『とりえ』だからなッ!」
は笑ったが、
ガイは何か物足りなさそうな顔をしている。
「その…なんだ…他には何か見えなかったか?」
「読もうとしたら読めるんだけど、誰かがガイに『○○について〜』と
聞けば、その答えとして本心を読むことはできるわ。
今、私は何も聞かなかったから、ガイが今一番心に思っていたことが見えただけ」
「そうか…」
なんだか、ガイが落ち込んでいるように見えた。
しかし、イキナリ顔を上げ、空の星に向かって一人決意を新たにしていたようだ。
……これってお得意の『自分ルール』か何かを考えたのかしら?
「
は…」
「ん?なに?」
「願い事とか、夢とかはないのか?」
「そうねえ…夢…とまではいかないけど、この私のチカラを木の葉に役立てるには
暗部に入った方がいいとは思うんだけど、暗部に入るには体力的に劣るから
『特別上忍』になれればいいなあって思ってる。そうじゃなければ、
このまま中忍でアカデミーの教師になれたらいいな…」
「
が学校の先生か!いい先生になるなぁ」
「そう言われると嬉しいよ。忍術・幻術は適当にはこなせるようになったからね。子供達に教えられるでしょ」
「そうか…。じゃあ『願い事』とかは…?」
「願い事…?」
「いつまでも、こうやってガイとお喋りできたらいいなぁ…」
そう思ったら、恥ずかしくなって話せなくなってしまった。
「ん?どうした?顔が紅いぞ!?」
「え?あ!な、なんでもないっ!」
ただでさえ、自分の気持ちを表に出すのがニガテなのに、
こんなコト、絶対ガイに言えないよ〜。
自分は人の心を読むクセにね……。
変な奴だな…とガイは笑ったが、またスグに笑顔は消え、
まじめな顔で
に話した。
「半年後の上忍試験で、必ず上忍になるから…
そうしたら、また此処で会って欲しいんだ!」
「何?どうしたの?急にあらたまって!?」
「とにかく半年後、上忍試験合格発表日の夜にここに来てくれ!」
よくわからないケド…ということは、半年もガイに会えなくなるのかしら…?
私の密かな願いは半年後まで『おあずけ』になってしまうのね…(泪)
少しだけ淋しいカンジもしたが、ガイの真面目な顔を見たら自分のワガママを通すわけにもいかなくなって
「うん…当日待ってるから…試験、頑張ってね」
「次に会うときは上忍だッ!」
ガイの眩しいばかりの笑顔とサムズアップを最後に二人は別れた。
上忍試験合格発表日の夜、
はガイ宅の屋根の上にいた。
この半年間、二人は会って話すことは一切無く、
任務中に何度か見かけたことはあったが、ロクに挨拶もしなかった。
一種の願掛けみたいなカンジで、
も今日という日まではガイに話しかけることをしていない。
それはガイも同じことで、
の気配は気付きつつも、話しかけることはしなかった。
「すまん!遅くなった!!」
「ん?大丈夫だよ…それより久しぶりだね」
「そうだな。お互い近くにはいたのにな」
「あ、ガイ!上忍合格おめでとう!!」
上忍合格の発表は木の葉の忍者なら誰でも知っていることで
もちろん、
も朝からずっと発表を楽しみにしていた。
「ありがとう…
」
「次は私が頑張らないとね…ガイ上忍!」
「なっ…『ガイ上忍』はやめてくれ!」
「フフフ…」
「…で、
の方はどうなったんだ?」
「アカデミーの教師になることにしたよ。私に合ってると思うし…でもね」
「ん?」
「火影様が私の能力を役立てて欲しいと仰られてね、尋問部隊に名を置くことになったの」
「尋問部隊…」
「さすがに拷問…のほうは私には向かないから、尋問部隊だけ。
それも臨時だから、呼ばれたときだけなのね…」
「…大丈夫なのか?」
「私の一族は、チカラはあっても忍者向きではない者が多くて…一般人なのに尋問部隊にいるということが多かったんだって。
一般事務で尋問部隊所属とか…。だから私みたいに中忍までなった一族は今までいなかったそうよ」
「そうか…」
「火影様は、私だったら特別上忍までいけると仰ってくれたんだけど、私が強くアカデミー教師を希望したから…」
「…俺は…」
「ん?」
今まで相づちしか打っていなかったガイがクチを開く。
「俺は正直、
が教師になってくれてホッとしている」
「ガイ?」
「いや、
の技術がどーこーというワケではなくてな。
なんていうか…その…教師の方が
らしいというか…」
「私らしい…?」
「……こんな言い方ではダメだな!男のクセに!!」
「???」
「半年前に『上忍試験発表日に会ってくれ』っていったよな」
「うん」
「実は話があってだな…」
「うん」
「その…なんだ……」
「……………」
「……………」
「……………」
ガイは下を向いたまま黙っている。
シビレを切らした
が『どうしたの?』とガイの手を触ったとき、
ガイが『あ!』という顔をして、
の手を握り返した。
「な、なに?」
「今、俺の心を読んでくれ!!」
「え?」
「言葉では…言いにくいから…直に俺の心を読んで欲しいんだ!」
「…いいけど…何について読めばいいの?」
「何も尋ねなかったら一番心に思っていることがわかるんだろ?
…だからこのまま何も聞かずに読んで欲しい」
は何が言いにくいんだろうと思ったが、ガイがどうしてもと言うので
ガイに手を握られたまま小声で術を唱えた。
上忍 ニ ナッタラ
ニ 告白 スル
俺 ハ アカデミー ノ トキ カラ ズット
ガ 大好キ ナンダ!
コレカラ モ ズット 一緒 ニ イタイ…
「これって…」
ガイの顔を見ると真っ赤になっていて
ただただ
の顔だけを見ていた。
そして、
「なんて見えたんだ…?」
「…こんな…こんな使い方をするなんて…」
「本当の気持ちだからなッ!嘘偽りは決して無いッ!」
人の心が読めるチカラ………なんてイヤなチカラなんだろうとずっと思っていた。
でもこんな使い方もあるなんて、一族の者でも気付かないだろう。
きっとこれは口下手なガイだからこその使い方なんだと
は思った。
「…でもさ、言葉で言って欲しい時もあるよね…やっぱり(笑)」
「そうか?いい使い方だと思ったんだがなあ」
「そうね。でもガイ以外には使って欲しくない使い方だわ(笑)」
「もちろんだッ!
に変な虫が付いてしまう!!」
「えっ!?そういう意味じゃなかったんだけど…」
ま、いいかという顔をしながら、
は夜空を眺めた。
ガイはというと、彼女のチカラを使ってだが一世一代の告白をしたのに
返事がないので少しだけ焦った。
「
…?」
「なに?」
「さっきの…返事なんだが…」
「ん?じゃあ今度はガイが私の気持ちを読んでよ」
「俺にはそんなチカラはないから無理だ…」
「そお?」
それじゃあ、こうすればきっと読めると思うよ…と、
はガイの手を両手で掴み、自分の唇へ引き寄せた。
「これなら、私のクチからガイの手へ伝わって、きっと私の気持ちが読めると思うよ」
「っ!!!!!!!!!!!!!」
ちょっとイジワルだったかなと思ったが、
正直なところ
も恥ずかしかったので、言葉ではなく態度で示しただけである。
鈍感なガイではあるが、さすがにコレは解ってくれただろうと
はガイの指に唇をつけたまま目を閉じた。
ガイはというと、相変わらず顔を真っ赤にしながらいつまでも
を見ていた。
END
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