「petal」
徹夜の任務が終わり、日中の仕事を他の隊士にまかせ
は代休を貰った。
「あとは、よろしく頼むわね」
「
班長は、最近まともな休暇をとっていないのですからゆっくりお休みになって下さい」
「何かあったら、地獄蝶を飛ばして下さい。すぐに行くから。」
「「なるべくそうならない様に頑張ります!」」
隊士達は、かなりの精鋭揃いなのでいつも心配はしていない。
自分は恵まれているなと嬉しく思った。
季節は春で、尸魂界の桜もそろそろ五分咲きといったところである。
その中でも一番早く咲く場所があり、
は家へ帰る前に寄ってみることにした。
「わぁ!」
一番早く咲くと言うその場所の桜はすでに満開で
チラチラと花びらが散り始めているものまである。
「すごいわね…。十四郎も此処の桜を見たかしら?」
ふと、彼の顔が頭をよぎった。
彼の住まう雨乾堂の廻りにも沢山の桜が植わっている。
帰りがてらに見に行こうと今度は雨乾堂の周りの桜を見に行った。
本当は、十四郎を誘って桜見物でもしたい処だが、
こっちは任務の朝帰り。誘うにはまだまだ早い時刻で。
さすがに迷惑だと、一人で池の周りを歩く。
「あ〜、やっぱりコッチはまだ咲いてない…」
尸魂界で咲くのが一番遅いのは、この雨乾堂近辺の桜であろう。
水辺だけあって、気温も廻りと比べてかなり低い感じがする。
しかし、色づいた蕾は開花が間近だと言うことを知らせている。
時同じくして雨乾堂では、
たまたま早く目が覚めた十四郎が窓から池を眺めていると、
その先に誰かが歩いているのを見つける。
「あれは…
…か?」
霊圧から察すると、やはり自分の想い人。
こんな朝早くにとも思ったが、きっと任務帰りなのだろうと
心の中で彼女を労う。
この辺りの桜は開花が遅いのを、雨乾堂の主は百も承知だが
羽織を引っかけ、桜の処へ向かった。
咲いていない桜の木の廻りでは、
が
一輪ぐらいは咲いているだろうと
桜の木を見上げる。
「咲きそうなのに、一輪も咲いてないのね…
そうよね、この辺りは空気がヒンヤリしていて
私だって少し寒いぐらい… …!」
独り言を呟く
に背後から白い布が覆ってきた。
振り向くとそこには自分の頭をよぎった…十四郎が笑顔で立っていた。
「それ、着てろよ。風邪引くぞ」
「風邪引くぞって…十四郎こそ風邪引いたら大変!」
「割と寒くないから大丈夫だよ」
「割とって…。それにコレは隊長の羽織じゃないの!」
は慌てて羽織を脱ごうとしたが、
十四郎は『寒くなったら返してもらうから』と言って
そのまま羽織を着させた。
「桜…まだだな…」
「そうだね…此処の桜は尸魂界で一番遅く咲くのよね…」
「そういえば去年も此処で
と会わなかったか?」
「うん、去年は満開の時だったけど、今年はまだ咲いてないみたい…」
十四郎が辺りを見回すと、たしかに桜はどれも蕾のままで
「もうすぐ咲きそうなんだがな… あっ!」
「何? どうしたの??」
「一輪咲いてるじゃないか」
「えっ!?何処に?」
十四郎は嬉しそうに
の頭に手を伸ばした。
髪には桜の花びらが1枚、それを手に取り彼女に見せた。
「この花びらって、何処から…?」
「花が散り始めている処と言えば、尸魂界で一番早く咲くという…」
「あ!此処に来る前に、一番早く咲く桜を見に行ったんだった!」
「やっぱり
も見に行ったんだな」
「十四郎も見に行ったの?」
「いや、海燕たちがな、花見に行ったと言っていたから」
「じゃあ、十四郎は今年の桜をまだ見てないんだ…」
「見たさ」
「何処の桜を?」
に聞かれ、十四郎はニコリと笑う。
そして自分の手の中の花びらを指さす。
「この花びらとそれを持ってきた
かな(笑)」
「私は桜じゃないわよ(笑)」
「そうか?俺はてっきり『桜の精』かと思ったんだがなあ」
「そういうクサイ台詞は、一体何処で覚えてくるのかしら?」
そう言って二人は笑った。
小一時間ほど居ただろうか。
そろそろ十三番隊の三席の二人が起こしに来るだろうから雨乾堂に戻らないと…
と
が言った。
「そうだな、居ないとあいつ等が騒ぐしな(笑)」
「じゃあ、私は家へ帰って少し眠るわ」
「やっぱり徹夜明けだったのか。大丈夫なのか?体調は?」
「大丈夫よ。相変わらず心配性ね(笑)」
雨乾堂に着き、
は借りていた羽織を脱いで軽く畳もうとした。
「畳まなくていいぞ。すぐに着るから」
「ありがとね。助かりましたv」
「あぁ」
「じゃ、また」
「ちゃんと寝ろよ!」
「うん(笑)」
二人は別れ、十四郎は雨乾堂の中へ入った。
の髪に着いていた花びらを文机に置き、
先程
に貸した羽織をひっかける。
すると彼女の残り香なのか桜の香りなのか
なんとも春らしい香りがするので、十四郎は目を閉じてその香りに酔いしれた。
END
画面を閉じてmenuにお戻り下さい。
------------------------------------------