「reason for tears」





















春水の昼寝場所はあらゆる処にある。
それは副隊長である伊勢七緒から逃げる為がほとんど。
しかしそこは八番隊の副隊長、春水の昼寝場所はほぼ知り尽くしている。
ただ、数ある場所を片っ端から探し回るのが大変で、そこが春水の作戦なのかもしれないのだが。






































「今日は何処にしようかなぁ〜♪」









鼻歌交じりに昼寝場所を探していると、四番隊隊舎の前で止まった。
護挺十三隊のなかで一番大きな隊舎を持つ四番隊。
それは病院としての機能を兼ね備えているためである。
そしてこの四番隊には、春水の親友兼想い人「 」が所属している。









「今日は四番隊の屋根にでもするかぁ」









屋根を見上げて一言呟くと、軽くジャンプをした。
さあ寝るか…と広い屋根を見渡すと
脚をかかえて座っている死神が、ぽつんと一人。
霊圧から察するに---------- がそこにいた。









ちゃん?」
「えっ?」









は、まさかこんな処に誰か居るとは思わなかったので、
驚いて声のする方を向いた……真っ赤な目をしながら。









「春…水…?」
「…どうしたの?目ェ、真っ赤だよ」








『あっ』という顔をしながら、 は下を向いてしまった。
春水に泣いていたとバレないように。
でもその赤い目を見てしまったら、今まで泣いていたのは一目瞭然で。









「よっこいしょ」









春水はわざと大きめの声をだしながら、 の隣へ座った。
彼は彼女に『どうしたの?話してごらん?』などとは言わない。
そんなことを言えば『ううん、なんでもない』と が言うに決まっているから。
でも彼女のことを一番気に掛けているのは、この春水である。
『話してごらん』と言わない代わりに彼女が自分から話すまで待ち、彼女の話を最後まで聞いてやる。
それが彼女への優しさであり、彼なりの愛情なのである。

………しばらくすると、 がポツポツと話し出した。









「春水…、私、四番隊に向いてないかもしれない…」
「……」









彼女が… が四番隊に向いていないなんて、誰が思うだろうか?
彼女は四番隊の中でも特別救護班『第零班』の長であり、それは隊長と同等の位である。
それは四番隊隊長の卯ノ花、山本総隊長はもちろん八番隊隊長の京楽春水も認めることで、
彼女が四番隊に向かないのであれば、今居る四番隊隊士は全て不合格と言っても過言ではない。









「さっきね、ある隊士が四番隊で亡くなったのね」
「…そうなんだ…」
「彼はね、虚にやられてしまって瀕死の状態で四番隊に運ばれてきたの。そして三日後の今日…」
「……」
「私を含め、特別救護班も治療にあたったんだけど、ダメだった…。」
「……」
「彼ね、最期に『ありがとうございました』って私達に笑顔で言って、亡くなったのよ…
 でも私は彼にお礼を言われるようなことは出来なかった…救えなかった…」
ちゃん…」









は、今までガマンしていた涙を再び流す。









「…救えなかったのよ?なのに『ありがとう』って言われたの!
 卯ノ花隊長は『最善をつくしたのだから』って仰るんだけど…。それもわかるのよ!?
 でも私には…出来ない…。頭の中で切り替えをして、別の治療をすることが… …」





























この子は本当に優しいんだな…と春水は思った。
自分が好いたのが彼女でヨカッタとつくづく思った。
でも隊長と同格の が、こんな不安定なことでは少々マズイとも思った。






























「死んでしまった彼は、最期にお礼をいったんでしょ?
 なんで彼が ちゃんにお礼を言ったのか?その気持ちがわかるかい?」
「その気持ち…」
「彼は ちゃん達が自分のために一生懸命治療に専念していたのを知っていたから。だから最期にお礼を言いたかったんじゃないかな?
 亡くなってしまったのは ちゃん達の治療の問題ではなく、寿命…運命でもあったわけでしょう。こういう言い方は申し訳ないけどサ」
「……」
「もしも彼が四番隊に運ばれなかったら…感謝する心を持って亡くなることは出来なかったと思うよ」
「感謝する心…」









は自分の技術の足り無さを恥じていたので、春水に言われるまで相手の気持ちの事まで考えてはいなかった。









「冷たいようだけどサ、四番隊の患者は『彼』だけじゃないでしょ?
 だから、患者が死ぬたびに泣いて落ち込むヒマなんかない…でも」









「卯ノ花くんだって、患者が亡くなる度に心を痛めているハズだよ?
 皆それを隠して乗り越えて、任務を果たしているんだと思う。
  ちゃんは、他の隊士より少しだけ患者に対する想いが外に出てしまうだけサ」
「春水…」
「でもその想いは本当に大事な事だから、 ちゃんは四番隊に向かないどころか、四番隊に相応しい隊士だとボクは思う」
「春水〜〜〜〜〜!」









は嬉しいやら悲しいやら…とにかく色々な気持ちがごちゃまぜになって
思わず春水に抱きついて大泣きをしてしまった。
春水は自分が羽織っている桜色の着物で彼女を包むように優しく抱きしめ返した。









「零班班長殿には、もっと頑張ってもらわないとね。もしボクが怪我をしたら ちゃんに治療してもらうんだから(笑)」
「…… イヤよ!」
「え……」
「二日酔だったり、風邪だったり、伊勢さんに叩かれたり…そーゆーのなら治療するけど…」
「…けど?」
「春水が虚にやられて運ばれてきたら…イヤ!
 もしものことがあったらなんて…そんなの…私、生きていけないわ…」
ちゃん…」









春水は、『自分が死んだら生きていけない』という言葉に嬉しさをおぼえつつも
やはり想い人が自分の後を追うというのはなあ…と複雑な思いだった。









「あ、でも治療はもちろんするわ!私の命に替えてでも死なせない」
「さすが四番隊!心強いねえ〜(笑)」
「だから、私が春水の後を追うことはないわね…死なないんだから(笑)」
「そうだね…でもね、四番隊へ運ばれる以前に…」
「?」









春水は を更にギュッと抱きしめると





























「ボクは死なない…倒れないサ… だって、強いからね(笑)」
「……………そうね(笑)」





























『京楽春水』はきっと自分にとっての『救護班』なんだなあと は彼の腕の中で思った。
もちろん、春水にとっても は己の『救護班』。









が泣く度に… 相談する度に…
春水が相談される度に… 慰める度に…










お互いの心は相手を想う心で充たされていくのだろう。
































 END


























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