「somewhere some time」









 













「はい、今日の分」









は十四郎に今日の薬の袋を渡した…が、
もう一つ、小さな袋が添えてあった。









〜、これなんだ?」
「開けてみて」









ガサゴソと袋を開けてみると、中からは小さめの櫛が。









「櫛……?」
「この間、『無くした』って言ってたから」
「あ…、覚えてたのか…」









先日、雨乾堂内で十四郎は櫛を無くしてしまい、
そのうち出てくるだろうと思ったものの、出てくる気配はなく
その話を にしたのだ。









「いつまでも『手櫛』ってワケにもいかないでしょ(笑)」
「手櫛でも充分といえば充分なんだがなあ」
「ダメ。隊長ともあろう御方が、髪の毛グシャグシャなんて格好つかないじゃない(笑)」









十四郎の持っている櫛を取り、 は彼の後ろへ廻った。









「髪、梳かすからじっとしてて」
「悪いな…」









は十四郎の真っ白で長い髪をゆっくり梳かしだした。














































「あのね…十四郎」
「ん?」
「今、思い出したんだけど…私、すごい小さいときに、十四郎に会ったことがあると思うの」
「俺に?」
「うん…、よくは覚えていないんだけどね、たぶんあれは十四郎だったと思うんだ」









いつ頃の話なのだろうと十四郎は思った。









「たしか…どこかのお屋敷の塀をよじ登ったら、髪の白い男の子がいてね、
 なんて綺麗な髪なんだろうと思ってね、急いで家に帰って『私も白い髪にしてー!』って母親を困らせたような…」





























あ、思い出した!
あれは…発病して…1年ぐらいたったころ…。
やっと落ち着いて、部屋で庭を見ながら横になっていたとき----------------------------------。

















































































(-------------ここだよ…この中!)












































……塀の外に誰かいるのかな……?










肺病を患ってから、約1年後、ようやく発作も少なくなり
十四郎は、ひとり自分の部屋で横になっていた。
外は天気も良く、心地よい風が吹いているので母親が空気の入れ換えと気分転換に窓を開けてくれた。










「外で遊びたいな…」









医者から外出を止められ、出かけることも出来ない。
いつ発作が起こるかもしれない状況なので当然許されるわけがない。









外では、子供達の遊ぶ声がときどき聞こえ、少年十四郎の心をかき立てる。
……と、そこへさきほどの『ここだよ…この中!』の声。
あきらかに塀の向こう側から聞こえている。









誰かいるのかと思い、十四郎は起きあがり、縁側まで出てきた。






























そこへ、一人の少女の顔が塀の上にひょっこり。





























「「あ!」」









お互い吃驚して、ただ見つめ合うだけ。
塀の向こうでは、別の子が「ねえ、居た?居たの?」
と塀の上の子をせかしているようだ。









「居たよ…白い髪の子……」









それを聞いた他の子たちは「きゃー、お化けの子--!」「気持ち悪い--!」などと言って
バタバタとその場から離れていったようだ。
十四郎は自分のことを『お化けの子』とか『気持ち悪い』と言われ、すごく悲しくなった。
すべてはこの髪の毛の色のせい。病で白髪になったこの髪のせい。
それだけ十四郎の発病・発作が壮絶だったことがわかるのだが
子供にそんなことを理解する能力はない。



























しかし…
今にも泣き出しそうな十四郎に、塀の上の少女が



























「君の髪の毛ってなんでそんなにキレイなの?」
「え?」
「真っ白なんて凄いキレイだよね…あたしも同じ髪にしたいな…」









十四郎は吃驚した。
病で変化してしまったこの白い髪を『キレイ』と言ってくれる子がいるなんて!
しかも『同じ髪にしたい』とまで言っている。









「僕は『十四郎』って言うんだ。君はこの辺の子なの?」
「私は『 』って言うの。『じゅうしろ』って言うの…」
「『 ちゃん』かあ…」









十四郎は久しぶりに同年代の子供と話ができて凄く嬉しかった。
このまま一緒に何処かへ遊びに行きたいと思ったが
病が現実へと引き戻す。









「僕ね、肺の病気なんだ…」
「病気だったの…」
「だから、髪の毛がね、真っ白くなっちゃったんだ…」
「そっか…大変なんだね…」









その後、半時ばかり縁側と塀の上でお喋りは続いた。
しかし、ここで十四郎が『くしゅん』とくしゃみを1つ。









「あ、もう寝ないと具合が悪くなっちゃうね」
「大丈夫だよ!まだお話ししてたいもん」
「ダメだよー。じゅうしろ君は寝てないとイケナイんでしょ?」









それじゃあ、と塀から降りようとする を十四郎は慌てて呼び止めた。









ちゃん!」
「?  なあに?」
「明日も来てくれないかな?」
「……」
「ダメ?」
「…あのね、明日、お引っ越しするの…」
「…そうなんだ…」









せっかく友達ができたというのに、明日でお別れだと知って
十四郎は肩を落とす。
そんな姿を見た はニコッと笑って









「また会えるよ…必ず!」
「え?」
「じゅうしろ君、それまでに元気になってね」
ちゃん…」
「今度会ったら、絶対遊ぼうね」









そういうと、 は塀の上から消えた。
十四郎は、ボーッと塀の上を見ていた。





































































小さいときの記憶。
自己紹介をしたはずだが、ひと昔もふた昔も前の話。2人とも覚えてはいなかった。
その後、学院で再開。しかし子供の頃の記憶は忘れていたので2人とも初対面だと思っていた。









「あの時の『塀の上の女の子』が だったのか!」
「やっぱり、十四郎だったのね。」
「あまりにも昔の話で、お互い学院で再開してもわからなかったな(笑)」
「そうね、今頃になって思い出すとはね(笑)…………でも…」



















「『必ず』会えたよね」



















が微笑むと、十四郎も「そうだな」と言って微笑んだ。
いつかどこかでなんて決めることは出来ないけど、こうして今は『親友』として、
いや、己の『想い人』として時を過ごせることに十四郎は感謝した。













































に出会ってから、どれくらいの月日が経ち、
再開するまでどのぐらいの時間を要したのか?






































十四郎と は一緒になるだろう。
それは近い未来?遠い未来?
もしかしたら明日なのか?






































そんなことは誰にもわからない。
ただ、どこかのタイミングで十四郎は に求婚するわけで……。
そして嬉しくて涙する を彼はやさしく抱きしめるのだろう…。


































































いつかどこかで-----------------------------------------。































 END


























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