「squabble」





















「十四郎!子供じゃないんだから、薬ぐらい飲んでよ!」









雨乾堂から聞こえる の声。
しかしいつもと雰囲気が違うようだ。
普段、穏やかな彼女が珍しく声を荒らげている。









「わかったよ。後で飲むよ」
「今飲んで!」









やはり、いつもの とは違う。
何か苛ついているような…。









「そう、イライラするな(笑)」
「イライラなんてしてないわ」
「俺にはそう見えるんだがな…」
「それは! ……十四郎が薬を飲まないからでしょ!」









が八つ当たりするとは…珍しい… と十四郎は思った---------が、
八つ当たりされる覚えはないとも思ったので、少し意地悪をしてみる。









「俺が薬を飲まないから、八つ当たりなのか?」
「なっ!誰が『八つ当たり』よ!」
「どう見たって『八つ当たり』じゃないか」
「自分がいつも薬を飲まないからって、八つ当たりとか変なこと言わないでよ」
「それはこっちの台詞だ! の機嫌が悪いのと俺が薬を飲まないこととは関係ないだろ!?」
「関係ないですってェ!?四番隊が十四郎のために調合した薬を飲まないことが関係ない!?」
「今は薬を飲まない事じゃなくて、 の機嫌の悪さの問題だろ!」
「だから、なんで私の機嫌が悪いって言うのよ?」
「良くはないだろ!!」









2人の言い争いは、外にまる聞こえで、仙太郎と清音が雨乾堂の前でオロオロしている。
そこへ副隊長の海燕がお茶と菓子を持ってやってきた。









「何してんだ?お前等?」
「「ふ、ふ、副隊長〜〜〜〜〜!!!」」
「あん?」









雨乾堂からは、少々苛立った霊圧が2つ放出されている。
それも、いつもなら穏やかなはずの十四郎と の霊圧。









「どうしたんだ?あの2人は?」
「「気が付いて来てみたら、こんな状態で…」」
「ふ〜ん。ま、とりあえず仕事に戻っていいぞ。俺は隊長に用事があるから」









三席の2人は、『助かった!』という顔をして隊舎へ戻った。



























































その頃、雨乾堂の中では、まだ機嫌の悪そうな と、
からかうつもりが、自分も少し苛立ってきた十四郎が『だんまり』を決め込んでいる。
しかしこの雰囲気を脱したい十四郎がクチを開いた。









「いつまで、そうやって黙ってるんだ?」
「………」
「おい!」
「……早く薬飲みなさいよ…」









まだ言うか!
ったくコイツは……。










十四郎もかなり機嫌が悪くなってきて…





























「俺が薬を飲もうが飲むまいが、俺の勝手だろ! には関係ない」





























「!」





























今まで、そっぽを向いていた が、十四郎の言葉で顔を向けた。
その顔は、驚いているような…だがとても悲しげな顔をしている。









「十四郎…その薬…そんな風に思ってたの!?」
「えっ?」
「皆が十四郎の病気が少しでも良くなるように…の想いがつまっている薬を
 『飲もうが飲むまいが』で片付けちゃうのね…」
「い、いや…そういう意味では…」
「私は『十四郎の専属』として四番隊から派遣されてるけど、そんな風に思われてたんだ…」
「す、すまん… …」









すると、 はいきなり立ち上がり、雨乾堂から出ていこうとした。









「ま、待て! !」
「十四郎なんか…」









小声で発した が十四郎の方へ少し振り向いた……そして……







































「自分で治そうとしないんなら、私は用済みよね…
 …どうなったって知らないわ……」







































そう言って、足早に雨乾堂を後にした。
外には海燕がいたが、彼にも気づかない様子で去っていく。









と入れ違いのように海燕が十四郎の元へ来た。









「隊長、喧嘩ッスか?」
「そんなつもりじゃなかったんだが…」
さん、泣いてましたよ」
「……あぁ、知ってる…」








海燕は、十四郎が の事になると一喜一憂するのを知っているので、
しょうがない…と言う顔をしながら、十四郎に苦言を呈した。









「いい加減、大人なんだから…」
「…すまない」
「俺じゃなくて、 さんに謝らないと」
「でもな、アイツも悪いんだぞ!」
「『でも』じゃないッスよ!そこが『大人気ない』んスよ」
「う……」
「でも今日の さん、イラついていた…というよりは、なんか疲れてたってカンジでしたよね」
「疲れてた?海燕にはそう見えたのか?」
「え!隊長!気づかなかったんですか?」









十四郎は最近の の様子を思い出してみた。
そういえば最近、 が雨乾堂に来るのではなく
他の四番隊隊士が薬を届けに来てくれている。
任務で出かけているのであれば仕方のないことなのだが、
の代わりに来た隊士に聞いてみると









班長は隊舎にいらっしゃいます」









いるのに来ないということは、それだけ忙しいからであろう。
十四郎は『あっ!』という顔をして海燕の方を向いた。









「ったく、いつも さんのこと見てるクセに何処見てるんスか!」
「…すまん…」
「しかも何か言ったんでしょう。 さんが泣くぐらいのことを〜」
「あれは…その…なんだ……『俺が薬を飲もうが飲むまいが、俺の勝手だ! には関係ない』
 って言ってしまったんだ…」
「あ〜あ、 さんが一番嫌がるようなことを…」
「つ…つい…な…」
「『ついな…』じゃないッスよ!」
「とにかく捜しに行ってくる」









十四郎はあわてて雨乾堂を出た。










「隊長もいい加減、 さんとくっつきゃいいのに…」









海燕はヤレヤレという顔をしながら、十四郎を見送った。



































































当の本人、「 」はというと、
四番隊隊舎の屋根の上にいた。



















「はぁ…」









今日、何回目の溜息だろう。
先程から のクチから出るのは溜息だけで。









「いつものやりとりなのに、なんであんなに当たっちゃったんだろ…」









はゴロンと横になると、雲一つない空を眺めた。
たしかに最近、任務が忙しく疲れてはいたのだが
八つ当たりするなんて、自分はまだまだ修行が足りないとつくづく思った。









「十四郎に謝らなくちゃ…」









病と闘っている十四郎に自分は
『どうなったって知らない』と言い放ってしまった。
それは、四番隊隊士としても十四郎の友人としても
なんて冷たく酷い言葉なのだろうと
思い返せば返すほど、後悔と反省の念のみが残る。









「十四郎、怒ってるよなあ…」
「怒ってなんかいないぞ!」
「!」









後ろへ振り向くと十四郎がニコニコしながら立っている。
は驚いたものの、すぐに十四郎とは逆の方向へ顔を向けた。









!?」
「え!?あ… その… ご、ごめんなさい!!」
「謝らなければいけないのは、俺の方だよ」
「?」









十四郎は の隣へ腰を下ろした。









「俺が…その…   大人気なかった!すまん!!」
「十四郎!なんで謝るの?」









は十四郎の方へ向き直ると、慌てて彼の詫びを止めた。








「大人気ないのは私の方!しかも四番隊のくせに治療放棄するような言葉を言って…。
 四番隊失格よね…いい歳をして情けない…」
「それは違う!任務で疲れている上に俺のワガママを聞いていれば、怒るのは当然だ!」
「いくら任務が忙しかったからって感情的になった私が悪いのよ…」
「感情的になったというなら、俺も感情的になった…」









ああ言えばこう言う…で、とうとう二人とも笑い出してしまった。
ひとしきり、笑っていると、今度は のクチが開く。









「十四郎、最近、身体の調子はどうなの?」
「あぁ、良好だ!」
「そう…。よかった」
こそ、忙しそうだが大丈夫なのか?」
「うん…とりあえず今日でなんとか落ち着いたみたいだし…」
「そうか…」









十四郎は『ゴホン』と咳払いを一つすると、少し言いにくそうに









「薬は…その…極力飲むようにするから… な!」









はちょっとだけ嬉しそうな顔をした。










「…少しでも量が少なくて済むように、飲みやすいように頑張って薬を作るから…。 それから…」
「それから?」
「短い時間でも、なるべく十四郎の顔を見に行くわ。診察はモチロンだけど…」









は、その先の言葉が言いづらいのか、下を向いてしばらく黙っていたが、
意を決したかのように顔を上げてこう言った。









「私ね、十四郎の顔を見ると落ち着くっていうか…自分に対して素直になれるっていうか…。
 なんか凄く安心するのね…だから…診察よりも私が十四郎の顔を見たいんだと思う…。
 本当は私が安心させなきゃいけない立場なんだけど…」









思いがけない言葉に十四郎は少し驚いたが、彼も素直な気持ちを に話した。









「初めて会ったときから、 は俺を落ち着かせたり、安心させてくれてるじゃないか…」



















 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




そして十四郎は立ち上がり、
「さあ、茶でも飲もうか!」
と、いきなり空に向かって喋りだす。

 

 

 

 

 

 

 

 

自分が言った言葉が恥ずかしかったのか、
よそ見をしながら の手を取ると
雨乾堂へと向かっていった。

































 END


























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