「your birthday」
12月21日-----------------------今日は俺の誕生日……だった。
朝からいつも以上に仙太郎と清音がバタバタと騒いでいるので何事かと聞いてみると
「「今日は隊長の誕生日会であります!!」」
そう言われ、『え?今日?』とかなり間抜けな顔をしてしまった。
そうか…今日は俺の誕生日だったのか……。
そうだよな、昨日が日番谷の誕生日だったのだから、今日は俺だった…(汗)
…ということは、昨晩に引き続き、誕生日会という名の呑み会が今日もあるわけだな。
十四郎はしょうがないな…という顔をしながら笑った。
『浮竹隊長誕生日会』と銘打って、まずは祝いの品を大量に貰う。
十三番隊隊員からはもちろんのこと、他の隊の連中からも沢山貰った。
「毎年、すまないな」
「「何を仰るのですか!隊長のご生誕を祝うのは当然のことであります!」」
仙太郎と清音が相変わらず、一言一句同じ事を叫ぶ。
そんな二人の後ろに八番隊の隊長・副隊長、京楽春水と伊勢七緒の姿が見えた。
「春水!」
「よ〜、今日の主役!調子はどうだい?」
「ん〜、最近はまあまあだな。伊勢君も来てくれたのか」
「浮竹隊長、お誕生日おめでとうございます。…これを…」
七緒が風呂敷を開けると、中からは「湯飲み茶碗」が出てきた。
「浮竹隊長は、お茶がお好きなので、気分を変えたいときにでも
この湯飲みで飲んでいただければと思いまして」
「お、これはなかなか飲みやすそうな湯飲みだな…ありがとう」
春水も『ボクからはねえ』と言って風呂敷を手前に出してきた。
「春水…これは『酒』だろう」
「あ、バレちゃった?」
「隊長!浮竹隊長に『お酒』なんて!」
「大丈夫だよ、伊勢君。どうせ春水がほとんど呑んじゃうんだ(笑)」
「ずいぶんな、言い方だねえ…浮竹ェ………と、ところで」
春水があたりをキョロキョロと見渡す。
「
ちゃんは来ていないのかい?」
「ああ、急ぎの任務があるらしくて遅くなるらしい」
「それは残念だなあ。会うの楽しみにしてたのにぃ〜」
「ま、仕方ないさ」
誕生日会という名の呑み会は夜遅くまで続いた。
十四郎は、2時間ほどで宴から退いた。
今日の主役とはいえ、隊長がいると気を使う者もいるだろうという配慮から。
逆に隊士達も十四郎の体調を考えれば、あまり長い時間、皆と一緒になって酒を呑んでいるのは良いことではないと思っている。
十四郎が途中で抜けることは「暗黙の了解」であり「皆の優しさ」でもあるのだ。
といっても十四郎はさほど酒を飲んではいない。しかし宴会場の熱気が凄かったせいか顔がいくらか紅くなっていた。
雪は降ってはいないものの、かなりの寒さである。
火照った顔を冷やすように十四郎はゆっくりと穏やかに雨乾堂へと歩いている。
「こんな寒い中をゆっくり歩いていると風邪を引きますよ…浮竹隊長(笑)」
「『隊長』は余計だろ(笑)
」
目の前に、任務帰りの
が笑顔で立っていた。
「今日の主役が、こんなに早く帰っちゃっていいの?」
「大丈夫。俺がいなくても呑み会は続いているしな…それに」
「それに?」
「春水も楽しそうに呑んでいたよ」
「……春水らしいわね」
それじゃあ、明日の伊勢さんは大変でしょうね…と
は笑った。
「あいかわらずスゴイ量のプレゼントね」
「有り難いことだけどな、少し重い(笑)」
「半分お持ちいたしますわ…隊長殿」
「悪いな…
殿」
「うわっ、十四郎に『
殿』って言われるの、気持ち悪い」
「だろ!?だから『隊長』って呼ぶのも無しだ」
「わかったわよ(笑)」
「ところで、今日の任務は終わったのか?」
「うん、おかげさまで」
「じゃあ、今晩はゆっくりできるんだろ?雨乾堂で茶でも飲んでいけよ」
「では、お言葉に甘えて」
素直に誘いに応じた
を見ながら、十四郎は至極上機嫌だった。
「お茶を飲む前に-------」
雨乾堂で茶を入れてもらい、十四郎が湯飲みを手に取ろうとしたとき
は彼の前で正座して一言。
「十四郎、誕生日おめでとう…」
「ありがとう」
「……でね…毎年毎年申し訳ないんだけど…」
「ん?なんだ?」
「……今年も誕生日プレゼントが遅れます…。ごめんなさい!」
しばしの無言。
しかし次の瞬間、
「あっはっは…!
らしいな(笑)」
「え?」
「プレゼントなんていいんだよ!」
「でも〜」
「いいんだ!
が祝ってくれれば、それで充分だし」
「でもねえ…やっぱり何か渡したいじゃない〜」
「そういうもんか?」
「十四郎だって、昨日の日番谷隊長の誕生日に何かお祝いを渡したでしょ?」
「誕生日だからな」
「ほら、やっぱりプレゼントは大事じゃないの!」
しかし
は何をあげればいいのか、考え込んでしまった。
そんな彼女を眺めているのも面白いのだが、あまりにも長い時間
考え込んでいるから、十四郎は痺れを切らして
「考えは纏まったのか?(笑)」
「……まだよ!」
「お茶、冷めちゃったぞ」
「あーん、何をあげればいいのかしらー!」
本当に悩んでいるようなので、十四郎は助け船を出すことにした。
「なあ、
。俺の欲しい物をくれないか?」
「十四郎の?」
「何をくれるか秘密なのも楽しいが、欲しい物をくれるのもかなり嬉しいものだぞ」
「……そっかあvなるほどね!!」
の顔が明るくなり、十四郎の顔を嬉しそうに見つめる。
「十四郎!何が欲しい?」
「そうだなあ…俺は欲張りだからな。たくさんあるぞ!」
「えー」
は『えー』と言いながらも、十四郎の欲しい物だったら無理してでも…
と思っていたので、何を言うのかとても楽しみだった。
「早く!教えて!」
「去年よりは今年、今年よりは来年、こうして二人で茶を飲む時間を増やして欲しい」
「……お茶を飲む時間?----------」
は不思議に思った。
お茶を飲むなんて普段言ってくれてもいいことで
わざわざ今言うことではない。
ましてや、物ではないので自分が何かを買ったり作ったりしてあげることではない。
「十四郎、『お茶を飲む時間』はプレゼントじゃなくても…」
「いや、ちゃんと『貰う』ものを言っているぞ!」
「?」
「お茶を一緒に飲むために、
の『時間』をくれと言ったんだ」
「時間…」
「もちろん、『出来る範囲』でのことだがな」
にとっては、自分の想い人からそんな事を言われ、とても嬉しかった。
だが今は
が十四郎に喜んでもらう事を考えなくてはならない。
「十四郎、お茶を一緒に飲むのは私も嬉しいからいいんだけど…」
「だけど何だ?」
「…その…カタチのある物と言えばいいのかしら…」
「…
…あのな…」
「…なに…?」
「いくらプレゼントを貰っても…だ、心がこもってなければ嬉しくないだろ?」
「うん…まあね」
「安かろうが高かろうが、要するに『気持ち』の問題だよな?」
「…それはそうだけど…」
「俺は
に『茶飲み時間をくれ』と言った。
はそれを喜んでくれた。
が喜んでくれるなら、俺も嬉しいワケだ。
茶を一緒に飲もうと言っているのに、『仕方なく飲んでやる』と言われたら、それこそショックさ(笑)」
…まぁ、とにかく十四郎がかなり喜んでくれているので、
は良しとすることにした。
冷めたお茶を入れ替えて、改めて飲み始めた。
「あのね、十四郎」
「ん?」
「さっき、『去年よりは今年、今年よりは来年、茶を飲む時間を増やして欲しい』って言ったじゃない」
「あぁ」
「そうすると、10年20年後になったら、四六時中一緒に「お茶を飲む」ってコトになっちゃうわね(笑)」
がフフッと笑うと、十四郎は茶を飲みながら
「四六時中…一緒でもいいんじゃないか?」
しれっとそんなことを言った。
は聞き違えたのかと思い「え?」と聞き返したが、
十四郎は聞こえない顔をしながら茶菓子をクチにした。
END
画面を閉じてmenuにお戻り下さい。
------------------------------------------